虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

継次処理能力が優れている子、同時処理能力が優れている子 5

2014-04-15 14:34:48 | 教育論 読者の方からのQ&A

持っている能力をきちんと発揮することができない子との関わり 7の記事の続きは、

近いうちに書かせていただきますね。

 

続きを書きます……と言いながら、伸び伸びになっていた

継次処理能力が優れている子、同時処理能力が優れている子 1

継次処理能力が優れている子、同時処理能力が優れている子 2

継次処理能力が優れている子、同時処理能力が優れている子 3

継次処理能力が優れている子、同時処理能力が優れている子 4

の続きです。

 

「同時処理能力が優れている子」という書き方をしていますが、

同時処理、継次処理バランスよく優れている子ではなく、

偏りがある子について書いています。

 

同時処理能力が優れている子は、算数の文章題を解くときに、答えだけ書いて

式を書かない子が多いです。

そんなとき、「答えがあっているなら、途中経過もわかっているはず。

めんどくさがり屋なんだから……。」と決めつけて、

「式も書きなさい!」とうるさく注意しても、反発をまねくだけです。

 

それより、「答えはあっているけれど、式の書き方はわからないかもしれない。

答えは出せていても、途中経過について、理解が深まるよう付きあってあげよう」と

考えるのがいいかもしれません。

 

同時処理能力が優れている子は、頭の中で無意識に数を増減させて

答えを出す子らがいますが、それらを順序よく式にしていくのは

苦手なようです。

 

困ったことに、同時処理能力が優れている子のほとんどが、

人の説明をきちんと聞こうとしません。

また、問題集の答えの式を写させて、「こういうふうに書きなさい」と指示した

ところで、「もう答えがわかっているのに、どうしてこんなことしなくちゃなら

ないの?」といやいや写すだけで、理解に至らないはずです。

 

教室では、こんなことに注意して対応しています。

 

★ 「式の欄のこのスペースに何を書いて、このスペースに何を書くか」と、

全体をいくつかの枠に分割するようなイメージを与えます。

同時処理の子は、順番に式を立てていくのは苦手ですが、

「答えを出すために3つの手順が必要」といった全体を分割するイメージで考える

ことは得意です。


あとから数字や数式を入れる予定の部分を取りあえず

四角い枠で書いて、答えまでにいくつの枠が必要なのかわかってから、

枠の中の処理にあたるのなら、落ち着いて問題に取り組むことができます。

途中で何をやっていたのかわからなくなる……という同時処理能力が優れている子が

継次処理を必要とする作業をしている間になりがちな、

思考の迷子状態を避けることができます。

 

ワーキングメモリーが弱い子の場合は、枠を作った時点で、そこに何を書くかわかる

タイトルをつけておくといいかもしれません。

 

たとえば、「3Lのミルクを1人に4dLずつに分けることになりました。

何人に分けることができて、何dLあまりますか」

という問題でしたら、


「単位を(そろえるために)変換するスペース」


「分けるから割り算」


の二つのスペースをイメージしてから(初めのうちは、薄く鉛筆で四角を書いておく)

解いていきます。

 

同時処理能力が優れている子の多くは、とても創造的で、拡散的思考が得意です。

(創造的ではなく、拡散的思考は苦手だけれど、

数を扱う力が高い同時処理能力が優れている子もいます。)

でもそのせいで、一つの作業に入るやいなや、次々とそれから派生する何かを閃いて

自分の考えを追うのに夢中になり、途中で何をしていたのかわからなくなることが

起こりがちなのです。

 

★ しょっちゅうミスをする子には、「ミスしないように、ていねいにやりなさい」とか

「ミスさえしなかったらいい点なのに……」と言うのではなく、

「どうしたら、ミスが減らせると思う?」とか、「ミスした原因は何かな?」

「次にミスしないためにどうしたらいいかな?」といった質問をして、

同時処理能力が優れた子の洞察力を使って、ミスを減らす方法を考えさせます。

 

このタイプの子に、ミスしないように小言を言っても、ミスを減らすどころか、

根気よく問題に付き合う意欲を奪って、さらに悪い結果を招くのがオチです。

ミスしないことが、答えを出すことより大変であることを理解した上で、

ミスしないための工夫をいっしょに考えて、そのために努力する力が萎えないように

励ましていきます。


★ 初めて勉強する場合でも、順番に基礎から理解させていくよりも、

問題と答えを見せて、全体を捉えさせる方が理解しやすい場合が多いです。

 

 ★ 勉強の中で、自分のアイデアや洞察力を使えるように配慮します。


漢字を覚えるにしても、

「何度も練習しなさい」と言うより、

「どうしたら少ない回数で、完璧に覚えることができると思う?」とたずねたほうが、

きちんと覚えるはずです。

「間違えないように書きなさい」と言うより、「どこが間違えそう?この2本の線と

3本の線を間違いそうだよね」といったおしゃべりをしたほうが、

正確に書くようになるかもしれません。


 

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ももぞう)
2014-04-16 16:50:56
なおみ先生、私もとても参考になりました。

ブログにこの記事引用させていただきました。
事後報告ですみません!

いつも、ためになる記事をありがとうございます!!
返信する
すごく参考になりました (まるまる)
2014-04-16 14:35:08
こんにちは。

いつも楽しく拝見させていただいています♪

小学4年の息子がまさにこの同時処理能力が優勢タイプで、「答えがわかっても式を書くのを嫌がる」のです。

先日、担任の先生とお話する機会があって、どうフォローすればいいか相談したら、「式を書くように説得する」よう助言されてしまい困っていました(-_-;)

説得でどうにかなればだれも悩まないです(笑)

なので、今回の記事はとても助かりました。
ありがとうございました。


ちなみに前回の記事の★くん、少し息子と似ていて親近感わきました。

息子は、2年後半~3年生ぐらいから徐々に自分の考えを伝えらるようになってきて、そうなると周りの目も変わりました。

そうなるまで、やきもきしながら、成長を待っていたので心底ほっとしたものです(^^)
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算数とピアノ (しまなみ)
2014-04-16 12:12:13
ムスメはどんなタイプのひとか、よくわかりませんが、すくなくとも、コツコツ型ではなさそうです。
ミスと算数の関係は、楽器の演奏とミスの関係にも似てるかな、と、記事を拝見して閃きました。
ムスメはコツコツ練習しないし、よく楽譜も読まないので、よくミスをします。聞いてる方は、とほほなのです。アドバイスも聞いちゃいないし。
上手にひけたときの録音などを聞かせ、全体像を掴ませるリードも必要かな。
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ありがとうございます。 (まりもん)
2014-04-16 10:28:42
息子(中2)についての長年の謎が解けた気がします。
この記事を読ませて頂き、嬉しかったです。ありがとうございました。

私自身が、社会に適応するのが難しく、仕事が長続きしたためしがなく、鬱で今はストラテラというお薬を飲んでいます。

息子も私と似ているため、将来が心配になり、最近は、高校受験のこともあり、苛々して叱ってしまうことが多く、反省しても繰り返してしまい、息子に対して本当に申し訳ない母です。

なおみ先生のこちらの記事や、最近の記事を読ませて頂いていて、
注意深く彼の素晴らしさに光を当ててあげないとなぁ…と、あらためて思いました。

子どもにとって、親に理解されないことほど悲しいことはないですよね…。

彼のキラキラした生命力を、私が奪ってしまわないように。
いつもうまくいかないことばかりだけど、祈るような気持ちで、子育てしていきたいです。

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