個性に合わせた自由研究のテーマ選びの続きです。
コメント欄で次のようなご質問をいただきました。
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先生のお子さんたちが小学生の頃、いろいろなコンクールに出品してたくさんの賞を頂いていた、という過去記事を思い出しての質問なのですが……
先日、朝の情報番組で夏休みの自由研究についての特集を外出前にちらり、と見たのですが、その中に小4の女の子の研究で「なめこのお味噌汁はどうして冷めにくいのか」というものがありました。
女の子は小さく切ったにんじんを使って熱湯のなかでのにんじんの動きから、なめこのぬるぬるがお湯の対流をおこさせにくくするために、熱が逃げにくいという結論を導き出していました。
確かにあんかけのものとかって、なかなか冷めにくいですもんね。でもそこで対流が起こっていたとは、恥ずかしながら知りませんでした。
こういう研究って、親が結論を知っていてその結論を出せるように導いているんでしょうか?
にんじんを細かく切って……などという方法は、対流が起こっているからという原因さえ思いつかなかった私には子供に提案してあげることすら、できません。
なんだかやっぱり親の力不足は大きいなぁとがっくりしてしまいましたが、先生の場合はどの程度まで親が準備し、子供に考えさせていらっしゃたのでしょうか?
よろしければ教えてください。
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すでに答えが本なりネット内なりにあって、大人の誘導によって答えの方向に導く
といった形で研究したものは、
自由研究で賞をいただくことはまずないのではないか……と思います。
子どもの疑問からスタートして、その疑問がこれまでおそらく誰も調べたことがないもので、調べたり実験したりして試行錯誤を繰り返す中で、こうではないか?という答えに近づいていったものが主流だと思います。
私が娘や息子と自由研究をする場合、
日常生活のなかで子どもが疑問を感じたり、やってみたいと思ったことで、私自身、結果を知らないものをテーマにしました。
(わかっていることは、誘導になって、研究の面白さがないからです)
調べる過程やまとめ方が子どもの個性と能力に合っていて、
80パーセント以上子どもがひとりでできることにしました。
親が手助けするのは、内容ではなく、
図書館に連れて行く、司書の方に専門書の場所を聞く手助けをする、
実験材料を購入する手伝いをする、
まとめて整理するとき、バランスよく最後までやり遂げられるようにアドバイスをする
にとどめました。
「魚の釣り方を教える」というのが、自由研究をする上で大事なことなので、
親が手を出した結果、賞をいただいて、子どもに「魚」だけ与える
という形にしては元も子もないと思っています。
以前、親子でチャレンジする 図書館を使った 調べる 学習賞コンクールというものに小4の息子といっしょに応募して、『ゲームと数の?な関係』というレポートで、公共図書館部門で優秀賞をいただいたとき、次のような講評をいただきました。
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この部は、ときどき親の方が夢中になって子どもの姿が見えなくなることがあるが、
『ゲームと数の?な関係』は、子どもの疑問に対する追及の姿勢、
親のほどほどのかかわり方、
明るくて楽しい家族が見えてくるようなレポートであった。
いかにも子どもの疑問という点では『ふしぎはっけん』の素直な疑問と、
それに対して親がていねいに調べ、きちんと答えていることに
高い評価があった。
しかしその一方で、夏休みの毎日、こんなに疑問を出されてはたまらない、子どもは調べることに参加でしているのか、という疑問もでた。
今年も著作権のことが問題になった。資料を切り抜いたり、コピーをし、貼り付けるという作品もあった。ただ集め、資料を並べただけでは 調べ学習 にはならないし、著作権は人格権でもあることも念頭において欲しい。
(小川俊彦)
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完璧さよりも、子どもが自分の疑問とどのように向き合い、研究から何を得るか……ということを大事にしてチャレンジしたことが評価されてうれしかったです。
自由研究コンクールは、たとえ賞をいただき、高価な賞品を手にしても、
それが子どもの真の学びにつながらなければ、あまり意味がないと思います。
夏休みのムダ使いになってしまいます。
私が、さまざまな子と接していると、
それぞれの子の個性に適した自由研究というものがあるのがわかります。
直感タイプでひらめきが多い子や思考タイプで深く思考していくことを好む子なら、
小さく切ったにんじんを使って熱湯のなかでのにんじんの動きから、
なめこのぬるぬるがお湯の対流をおこさせにくくするために熱が逃げにくいということに、さまざまな水と物の動きの関係を調べるうちに、気づいてひらめくかもしれません。
ですからそうした疑問を追及するタイプの自由研究が合っているでしょう。
でも感覚タイプの子の場合、
疑問の答えを追いかけるのではなく、
コレクションするように大量の魚のうろこを顕微鏡で調べて
絵にしていくといったものが合っているでしょう。
美しさへの感性や飽くことないこだわりに似た熱心さを生かすのです。
感情タイプの子の場合、生き物との交流を中心に
その生態の面白さを研究していったりするのが良いかもしれません。
特別な答えを求めていくのでなく、面白さへの敏感さを、表現していくのです。
★性格タイプについてはこちら→ 子どもの性格タイプについてまとめました
うちの場合、娘が賞を得たのは、商品開発などで大人も対象とした現代のニーズを読んでアイデアを表現していくことが主です。
性格も能力もちがうので、息子と同じような自由研究という考えはまったくありませんでした。
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