朝からよく晴れて、風もない、暖かな一日だった。自家製コロッケパンと紅茶の朝食をとってから、演習の学生たちのレポートの保存されたノートパソコンを肩掛けバッグに入れて、神奈川県立近代美術館で開催中の「冬の所蔵品展示-1910~1930年代の近代日本絵画を中人に-」を観に行く。蒲田から横浜までは京浜東北線(20分ほど)、横浜から鎌倉までは横須賀線(30分ほど)。車中でパソコンを開いてレポートを数本読んだが、プリントアウトして持ってきたほうがよかった。立ったままでも読めるし、アンダーラインを引いたり、欄外に書き込みをするのも簡単だから。
鎌倉に到着しホームの混雑に驚く。美術館は八幡宮の境内にあるのだが、小町通りは八幡宮に向う人たちと八幡宮から帰ってくる人たちで、アメ横や竹下通りのようである。古都鎌倉はまだお正月気分の中にあった。
これでは美術館も混んでいるだろうという予測は外れ、美術館は空いていた。人で溢れる八幡宮の境内の、そこ一画だけは、まるで結界でも張られているかのように、閑散としていた。八幡宮に来たついでに美術館に寄るという志向はほとんどないようである。二つはまったく独立の事象なのであろう。
神奈川県立近代美術館は日本で最初の公立の近代美術館である。国立の近代美術館や、公立の日本美術館は戦前からあったけれど、「公立」の「近代」美術館は戦後(1951年)にようやく誕生したのだ。展示室は3つあって、天井の高い、明るい、第3展示室が一番この美術館らしい空間なのだが、残念ながら、耐震強度に問題があるとのことで、現在は閉鎖中である。これで入館料700円(常設展)が以前と同じなのはおかしいように思うが、別館(徒歩5分ほど)でやっている「関合正明展」も一緒に観られるから、文句は言うまい。
第一展示室から第二展示室へ移動する途中に喫茶室「ル・ミューゼ」があって、ここで昼食(ドライカレーと珈琲)をとる。室内は狭くて調度もチープだが、テラスは開放的である。あまり期待しないで注文したドライカレーはとても美味しかった。
今回の展示会のポスターにもなっている古賀春江「窓外の化粧」は、竹橋の東京国立近代美術館に常設展示されている「海」と並んで、彼の代表作である。ビルの上の女性の身体の大きいこと。まるでキングコングだ。ただし映画『キングコング』の上映は1933年で、「窓外の化粧」は1930年の作品だから、古賀が『キングコング』を観て「窓外の化粧」の構図を思いついたわけではない(その逆もありそうにないが)。高いビルというのは都会の象徴で、その天辺に登って叫んでみたいというのは、洋の東西を問わない都会人の願望だったのだろう。1999年のTVドラマ『彼女たちの時代』(脚本:岡田恵和)の第一回のラストで、羽村深美(深津絵里)と太田千鶴(水野美紀)が「私はここにいるぞ~。気づけ、このやろう~」と叫んだのも、いまはない渋谷のブックファーストビルの屋上だった。
別館の展覧会を観た後、八幡宮にお参りし、若宮大路を鎌倉駅まで歩く。海岸に行ってみようかとちょっと考えたが、すでに4時半だったので、鳩サブレをお土産に買って、今日はこれで帰ることにした。
車窓から(大船付近)
鎌倉に到着しホームの混雑に驚く。美術館は八幡宮の境内にあるのだが、小町通りは八幡宮に向う人たちと八幡宮から帰ってくる人たちで、アメ横や竹下通りのようである。古都鎌倉はまだお正月気分の中にあった。
これでは美術館も混んでいるだろうという予測は外れ、美術館は空いていた。人で溢れる八幡宮の境内の、そこ一画だけは、まるで結界でも張られているかのように、閑散としていた。八幡宮に来たついでに美術館に寄るという志向はほとんどないようである。二つはまったく独立の事象なのであろう。
神奈川県立近代美術館は日本で最初の公立の近代美術館である。国立の近代美術館や、公立の日本美術館は戦前からあったけれど、「公立」の「近代」美術館は戦後(1951年)にようやく誕生したのだ。展示室は3つあって、天井の高い、明るい、第3展示室が一番この美術館らしい空間なのだが、残念ながら、耐震強度に問題があるとのことで、現在は閉鎖中である。これで入館料700円(常設展)が以前と同じなのはおかしいように思うが、別館(徒歩5分ほど)でやっている「関合正明展」も一緒に観られるから、文句は言うまい。
第一展示室から第二展示室へ移動する途中に喫茶室「ル・ミューゼ」があって、ここで昼食(ドライカレーと珈琲)をとる。室内は狭くて調度もチープだが、テラスは開放的である。あまり期待しないで注文したドライカレーはとても美味しかった。
今回の展示会のポスターにもなっている古賀春江「窓外の化粧」は、竹橋の東京国立近代美術館に常設展示されている「海」と並んで、彼の代表作である。ビルの上の女性の身体の大きいこと。まるでキングコングだ。ただし映画『キングコング』の上映は1933年で、「窓外の化粧」は1930年の作品だから、古賀が『キングコング』を観て「窓外の化粧」の構図を思いついたわけではない(その逆もありそうにないが)。高いビルというのは都会の象徴で、その天辺に登って叫んでみたいというのは、洋の東西を問わない都会人の願望だったのだろう。1999年のTVドラマ『彼女たちの時代』(脚本:岡田恵和)の第一回のラストで、羽村深美(深津絵里)と太田千鶴(水野美紀)が「私はここにいるぞ~。気づけ、このやろう~」と叫んだのも、いまはない渋谷のブックファーストビルの屋上だった。
別館の展覧会を観た後、八幡宮にお参りし、若宮大路を鎌倉駅まで歩く。海岸に行ってみようかとちょっと考えたが、すでに4時半だったので、鳩サブレをお土産に買って、今日はこれで帰ることにした。
車窓から(大船付近)