永井路子『望みしは何ぞ』
★★★★☆
【Amazonの内容紹介】
摂関政治を終わらせた男が真に望んだものとは・・・?
直木賞作家、永井路子が描く王朝貴族の野望と葛藤。
藤原道長亡き後、王朝社会を操る黒幕となった息子藤原能信。
皇子誕生を巡る貴族たちの思惑と
歴史に翻弄される人々がたどる数奇な運命。
『この世をば』に続く平安朝の物語を直木賞作家、
直木賞作家、永井路子が描く王朝貴族の野望と葛藤。
藤原道長亡き後、王朝社会を操る黒幕となった息子藤原能信。
皇子誕生を巡る貴族たちの思惑と
歴史に翻弄される人々がたどる数奇な運命。
『この世をば』に続く平安朝の物語を直木賞作家、
永井路子が彩り豊かに描く。
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藤原道長の子であり、頼通の弟である能信が主人公。
頼通をはじめとする鷹司系(倫子腹)に対し、
彼らに大きく水をあけられた高松系(明子腹)の息子として、
独自路線を歩んだ人生を描いた長編。
道長の息子が、摂関家の娘を母に持たない帝を即位させ、
結果的に摂関政治を終わらせる……という流れが面白い。
地位の上では逆転できず、権力者にはなれなかったが、
鷹司系の勢力を大きく後退させたという点で
ちゃんとカタルシスを得られるようになっている。
能信の養女が産んだ子が、堀河天皇の中宮なのだから、
道長の時代から院政期って、そこまでの長い時間を
隔てているわけじゃないのだな。
それにしても、貴族たちが権力者におもねって
敵対勢力の支持する帝やきさき、親王への奉仕を
ボイコットするの、いじめと変わりなくてほんとイヤねえ。
敵対勢力のきさきや御子が死ぬと、
気の毒にも思わず「ラッキー!」って思っちゃうのも、
結婚や出産が政治と直結していたから仕方ないのだが
「ヒューマニズムとは……」と思っちゃうね。