金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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110:永井路子『望みしは何ぞ』

2022-05-21 21:45:30 | 22 本の感想
永井路子『望みしは何ぞ』
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

摂関政治を終わらせた男が真に望んだものとは・・・?

直木賞作家、永井路子が描く王朝貴族の野望と葛藤。

藤原道長亡き後、王朝社会を操る黒幕となった息子藤原能信。
皇子誕生を巡る貴族たちの思惑と
歴史に翻弄される人々がたどる数奇な運命。

『この世をば』に続く平安朝の物語を直木賞作家、
永井路子が彩り豊かに描く。

****************************************

藤原道長の子であり、頼通の弟である能信が主人公。
頼通をはじめとする鷹司系(倫子腹)に対し、
彼らに大きく水をあけられた高松系(明子腹)の息子として、
独自路線を歩んだ人生を描いた長編。
道長の息子が、摂関家の娘を母に持たない帝を即位させ、
結果的に摂関政治を終わらせる……という流れが面白い。
地位の上では逆転できず、権力者にはなれなかったが、
鷹司系の勢力を大きく後退させたという点で
ちゃんとカタルシスを得られるようになっている。

能信の養女が産んだ子が、堀河天皇の中宮なのだから、
道長の時代から院政期って、そこまでの長い時間を
隔てているわけじゃないのだな。

それにしても、貴族たちが権力者におもねって
敵対勢力の支持する帝やきさき、親王への奉仕を
ボイコットするの、いじめと変わりなくてほんとイヤねえ。
敵対勢力のきさきや御子が死ぬと、
気の毒にも思わず「ラッキー!」って思っちゃうのも、
結婚や出産が政治と直結していたから仕方ないのだが
「ヒューマニズムとは……」と思っちゃうね。


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104--109:最近読んだ本

2022-05-21 21:42:35 | 22 本の感想
寿木けい『閨と厨』

十分に歳を重ねた大人ならではといった印象のエッセイ。
どきっとするフレーズがいくつもあって、
その一つ一つをメモした。


 佐々木と俊尚『家めしこそ、最高のごちそうである。』

どんなにいいことを言っていても、
誰かを否定するもの言いは
読む人・聞く人の印象を悪くするなあ……


 須野田誠『塾の効果を10倍にする家庭の習慣』

書かれているのは大部分が当たり前のことなんだけど、
この「当たり前」が当たり前になっていない家庭は
多いと思う。


 汀こるもの『探偵は御簾の中 泣かぬ螢が身を焦がす』

当時の考え方や社会のシステムをきちんとふまえたうえで
書いているのがわかるのが好き!
そう、結婚は政治!


 成田名璃子『今日は心のおそうじ日和』

ハートウォーミングな再生の物語。
シンプルながらよかった。
家事って、ほんとに誰にでもできるわけじゃないんだよ。


 泉坂光輝『神宮道西入ル 謎解き京都のエフェメラル』

語彙が豊かで、好きなところもあったのだけれども、
三話とも、ストーリーに「謎」を作るためだけに
登場人物が不自然な行動を取るのが
どうにも気になってしまった。
一応理由はつけられているんだけども、
やはりストーリーの都合だよね。


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