金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

98:三浦しをん 『仏果を得ず』

2012-08-17 08:39:45 | 12 本の感想
三浦しをん『仏果を得ず』 (双葉文庫)
★★★★☆

高校時代の修学旅行先で文楽を観劇した健は、
人間国宝である銀太夫に圧倒されて文楽の虜となり、
研修所に入って太夫となる。
銀太夫の弟子として文楽に情熱を傾ける中、
ある日突然、師匠から、変わり者と評判の三味線弾き・兎一郎と
組むように言われる。
兎一郎とともに試行錯誤を繰り返しつつ
小学校に文楽の指導に行っていた健は、
指導していた児童の一人・ミラと関わる中で
ある女性に心を奪われてしまう。

***************************************

ずいぶん前に先輩に借りたのだけど、
なかなか読む気になれず放置していたもの。
読み始めたらあっという間だった。
読み終わった直後はそれほどでもなかったけれど、
しばらくたってから「よかったなあ」と思えるような
小説だった。

現代人にとって文楽は日常的なものではないので
文楽そのもの、文楽に携わる人間、演目……と
いろんなことを文章の中でわかるように説明しなければならないのだけど、
これが「説明」にならずに、自然に文章の中に織り込まれている。
文楽の演目について、ストーリーを知らなくてもきちんと
物語として読めるようになっているところがうまい。
視点が健で固定されている分、感情移入がしやすいので、
『舟を編む』より一般受けしそう。
主人公が高校時代に不良だったというのが
現在のキャラクターとまったくつながらなくて違和感があるのだけど、
文楽と恋愛にのめりこんでしまう主人公を素直に
「がんばれ!」と応援する気持ちになれる。

登場人物の外見にかかわる描写が全体的に少ないというのがあって、
健が恋してしまう相手の魅力が最後のほうにならないと
よくわからないのはちょっと残念。


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97:重松清 『きみの友だち』

2012-08-15 09:26:13 | 12 本の感想
重松清『きみの友だち』 (新潮文庫)
★★★★☆

小学校時代の雨の日、交通事故にあって脚を悪くした恵美。
事故をきっかけにして、友だちの恵美に対する不満が
表に現れ、みなが恵美から離れていってしまう。
誰にも頼らず、誰も助けずに生きて行こうと決心した恵美だが、
運動のできなくなった彼女は、病気がちな由香ちゃんと
行動をともにするようになる。
恵美とその弟、周辺の小中学生を主人公にした連作短編集。

***************************************

八月の上旬に読んだのだけど、忙しい時期だったせいか、
感想を書くのをすっかり忘れていた。
かなーり前、これが雑誌連載されていた時に
恵美と由香ちゃんの関係の結末の部分だけ読んで、
仕事で「これがいいです!」とプッシュしたものの、
内容と「不完全な二人称」が理由で却下されたのであった。
読んだのはその部分だけだったので、
通して読んだのは初めて。

小中学生の人間関係の中に見える、微妙な意地の悪さとか
いやらしさ、ぞっとするような悪意なんかも
描いているのだけど、全体的にテイストは甘め。

弟のブンが可愛い。
なんでもできて、負けたことのない小学生の彼が、
同じくなんでもできる転校生のモトくんに対して
敗北を認めざるを得ない状況になったときのモヤモヤ、
そこでお姉ちゃんに電話しちゃう「弟」っぷり。
その後の中学生になってからのモトくんとの関係もいい。
そして、オールマイティなんだけど選ばれないモトくんも
いとおしい。

個人的に、最終話が興ざめだったので★4つ。
語り手が出てくるのがあまり好きじゃないのだと思う。
「きよしこ」は語り手が冒頭に出てくるだけだったから
それほど気にならなかったけれど、
これはフィナーレにあたる部分で前面に出てこられてしまったので
かなり白けてしまった。


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96:伊藤まさこ 『伊藤まさこの雑食よみ 日々、是、一冊。』

2012-08-14 08:37:38 | 12 本の感想
伊藤まさこ『伊藤まさこの雑食よみ 日々、是、一冊。』 (メディアファクトリー)
★★★☆☆

著者の本を読んだのは初めて。
他の本を読んだことがないので、
「ナチュラルな暮らし本」を出している人、
というイメージしかなかったのだけど、
この本の内容もそんな感じ。
本やカフェをクローズアップして紹介したページと、
「雑食よみ日記」という本に関するメモのページで構成されている。
紹介されているのは「暮らし」本とか「絵本」が多く、
著者に対するイメージに沿っている気がした。
好きな本について熱く語る、という本ではないので、
「本が好き」な人には物足りないかもしれない。
「著者の見せている世界」のファンにはきっとおもしろい。

きのこ図鑑を紹介しているページの
色とりどりのきのこの写真を見ただけで、
背筋がゾーッとして、自分は食わず嫌いなのではなく
本当にきのこが嫌いなのだと思った。


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95:横森理香 『開運生活!カラダとココロのお掃除術』

2012-08-11 08:21:53 | 12 本の感想
横森理香『開運生活!カラダとココロのお掃除術』 (ヴィレッジブックス+)
★★★☆☆

う~ん……
お掃除本はもういいや!

劇的にモチベーションをアップさせる新薬のような本を
期待してあれこれ読んでいたけど、この手の本は
自分にとって効果のあるものを一冊手元に置いておけば十分だな。

読んでいるときはそれなりにおもしろかった気がするんだけど、
読み終わって一日立つと「あれ、何が書いてあったっけ」と
思い出せないくらい、「焼き直し」感が強い。
「野菜はかさばるし、重い」「買い物が大変」には同意。


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94:ヒヨコ舎 『本棚』

2012-08-10 08:27:07 | 12 本の感想
ヒヨコ舎『本棚』(ヒヨコ舎)
★★★☆☆

歌人や作家、イラストレーターにライター、漫画家等々、
主に文筆業に携わる人々の本棚の写真とともに
本にまつわるインタビューを収録したもの。
登場するのは穂村弘、山本幸久、角田光代、長崎訓子、みうらじゅん、
喜国雅彦、大森望、中島らも、金原瑞人、宇野亜喜良、吉野朔実、
川上未映子、山崎まどか、石田衣良、桜庭一樹。
インタビュー部分には読んでみたいと思わせる本が出てきていたし、
自分の好きな本を写真の中に発見するとうれしい。
ただ、写真はもうちょっと多くてもよかったな。
アップで見たい!というところも多かった。

たまに、本棚の写真を集めたサイトを見る。
本棚にはその人の趣味嗜好が現れるので、見るのはおもしろい。
逆に、自分の内面をさらけ出すようで、
ありのままの本棚を見せるのには抵抗がある。
家に人が来るときは本を隠すことがあるし、
図書館で不意に知り合いに遭遇して
借りた本を見られるのも嫌だ。
同じように、この本に登場する人々の中にも、
取材が入るから本棚に手を入れたという人がいるんだろうな~と思ったり。

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93:山口謠司 『ん―日本語最後の謎に挑む』

2012-08-09 08:07:04 | 12 本の感想
山口謠司『ん―日本語最後の謎に挑む』(新潮新書)
★★★★☆

図書館で見つけて借りてきたもの。
それほど深く心に留めていたわけでもないし、
調べようと思ったことはないんだけど、
仕事をしている中で
「どうして五十音図の中に『ん』が含まれていないのか」
「古典の助動詞『む』に『(ん)』と併記されているのはなぜか」
(なぜ「む」を「ん」と読むのか)
というのはちょっと引っかかってはいたのよね。

わたしには言語学の素養がほとんどないので、
「子音の『m』『b』『p』の直前には『n』ではなく『m』を書く」
というヨーロッパ諸言語のルールも知らず、
本全体を新鮮な気持ちで読めた。
「上代特殊仮名遣い」も、なんとなーく「そんなものがあるんだなあ」くらいの
認識だったので、具体的にどういうものなのかがわかってすっきり。
なぜ「ヤ行」の「イ」段と「エ」段は「ア行」と同じなのか、
仕事柄、説明する機会は多いけれど、実はよくわかってなかったんだなと
気づく。
発音の種類など、専門的でよくわからない部分も多いけれど、
「ん」という発音と文字に、天台宗や真言宗がかかわっていたこと、
まだ存在しなかった「ん」という文字の代わりに、
撥音を表すさまざまな記号が作られては、定着せずに消えていったこと等々、
初めて知ったことがたくさん。

ひらがな「ん」の初出は明らかにされていたけれど、
カタカナ「ン」の形がどのようにできたのかが述べられていたのに対し、
ひらがな「ん」がどのようにできたのかが書かれていなかったのは、
すでに説が定まっているから?
(「无」の草体だというのは今wikiを見て知った)


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夏の一休み。

2012-08-08 08:10:08 | おでかけの記
毎年、己の力量のなさに打ちひしがれる夏……
今年の仕事は例年のように「泣くほどイヤ」というレベルでは
なかったけれど、毎日憂鬱であったことに変わりはなく、
最終日には安堵でぐったり。
こうなることを見越して、事前に、数か月に一度の贅沢、
ハイクラスホテルへの宿泊というニンジンを
設定しておいたのでありました。

しゃちほこ村のハイクラスホテルは、

・マリオットアソシア
・ヒルトン
・東急
・ANAクラウンプラザ
・ウェスティン

あたりかしら……ということで、今回は東急ホテルの
エグゼクティブフロアへ。

ホテルは老舗らしく重厚な感じ。
改装したらしく、コンセント以外は古さを感じさせない。


エグゼクティブフロアへは、専用カードキーで。
廊下の絨毯や部屋表示がおしゃれ。


「ちょっと広めの部屋をご用意いたしました」とのこと。
写真だときれいに色が出てないけど、
黒・ダークグリーン・オフホワイト・渋いグリーンでまとまっていて
内装は今まで泊まったホテルの中でいちばん好み!
ソファが大きくて、足を伸ばして寝られる。

書き物をするデスクもよかった。
こんな家に住みたい!


ほかの人が体験レポで書いていたので想定内だったけど、
エグゼクティブラウンジはフロントの横で、
窓もなく、かなりこじんまり……。
テーブルとテーブルの間が狭いので、
隣に人が来ると落ち着かない。
飲み物も食べ物もセルフサービス。
コンシェルジュが常駐していないので、気楽だけど、
人が少なかったせいか、最初の1時間半くらいは
プチフールがなくなっていても補充されず。
お昼間はプチフール、夕方からおつまみが出ていたけど、
ヒルトンやマリオットと比べると、かなり淋しい内容。

デジカメで自分撮りしていた夫婦に声をかけて
写真を撮ってあげた。
わたしのように「わーい、リッチ~!」とはしゃいで
写真を撮ってしまうような、普通のおじさんとおばさんが
多かったような? 夏休みだったからかな。

エグゼクティブフロアに泊まった人の朝食は、
・ホテル内ベーカリーの洋食バイキング
・「なだ万」の和朝食
・ルームサービス
・エグゼクティブラウンジでの特別メニュー
の4択。
ラウンジのメニューは期待できない……と思って
ベーカリーの方に行ったが、時間帯(朝7時半すぎ)のせいか、
混んでて待たされた。
ホテルの朝食で待たされたの初めて。
内容も、まあ普通といった感じだったので、
ルームサービスにすればよかったな。

・ヒルトン:一泊約2万円
・マリオット:一泊約3万円
・東急:一泊約2万円
(※いずれもネットのお得なプランだったので、実際はもっと高い?)

というお値段を考えると、
エグゼクティブフロア初体験の衝撃を割り引いても
やはりコスパの面でヒルトンが圧勝。
東急、部屋は本当にすてきだったんだけどね。
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92:平松洋子 『夜中にジャムを煮る』

2012-08-07 08:23:01 | 12 本の感想
平松洋子『夜中にジャムを煮る』(新潮社)
★★★☆☆

心惹かれる題名だなあ。

今記事を読み返したところ、『ひとりひとりの味』を読んだときには
「語り口やムードが好き」なんて書いていたのだが、
この本を読んだときには全然文章が頭に入ってこず、
「文章が合わない」とまったく逆の感想を持った。
読んだときのコンデションの違いなのか……。
勢いのある物語だとコンディションなんかおかまいなしだけど、
こういうエッセイは読む側のコンディションが
大きく影響する気がする。

カレーが食べたくなってしまった。


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91:まはら三桃 『鉄のしぶきがはねる』

2012-08-06 20:56:00 | 12 本の感想
まはら三桃『鉄のしぶきがはねる』(講談社)
★★★★☆

工業高校機械科に通う三郷心。
クラスに唯一の女子である心は、祖父の会社がつぶれた経緯が原因で、
裏切らず盗まれないコンピューターによるプログラミングに
打ち込んでいたが、ある日教師に呼び出され、
「もの研」(ものづくり研究部)の手伝いをすることになる。
結局、遠ざけようとしていた旋盤の魅力に惹かれる気持ちを抑えられず、
心は「もの研」に入り、「高校生ものづくりコンテスト」を目指すことになる。

*********************************

『たまごを持つように』にはイマイチ入り込めなかったけど、
これはおもしろかった。
縁もなく、興味もなかった世界なのに、
引き込まれて一気に読了。
旋盤による作業の魅力がちゃんと伝わってきた。

しかし、題材がちょっと変わっていて、
キャラクターもいい味出しているのに、
登場人物にまつわるエピソードが少なく、
あっさりしすぎていて、もったいないなあ……。
「もの研」メンバーの〈悪事〉も、祖父の会社の倒産の後日談も、
盛り上げようと思ったらもっと盛り上げられるような気がするんだけど。
恋の描き方も、にやにやさせられたものの、
前振りが少なかったので最初は「えっ、いきなり恋?」って感じだった。
先輩は、後輩に恋話とかしちゃうキャラなのか。


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NHK大河「平清盛」レビュー31

2012-08-05 20:45:19 | NHK大河「平清盛」レビュー
【今日の重盛】

清盛「俺はあんなに青臭くなかった」

視聴者からの総ツッコミを期待しているとしか思えない。

****************************************

今日の「清盛」は、

①伊東祐親、単身赴任中に愛娘が流人にたぶらかされる

②清盛、反抗期を長引かせる長男に手を焼く

③後白河、ファンキーに息子の葬儀に乗り込むが
 清盛に子どものように怒られる

と「オヤジーズの悲哀」3本立て!
特に伊東祐親なんか、都で「清盛コワーイ」とかブルってる間に
娘が男にたぶらかされてた上、その男が平家の仇なんだから、
泡食っちゃうよね!


なんか今日の重盛は、しゃべり方が大仰だったなあ。
公卿になった威厳を出そうとしてたんだろうか。
一門の前で清盛が大輪田泊プランを語る中、重盛が
「朝廷はそんなに甘いところじゃない」
と宗盛をたしなめるところで、すでに孤立の予兆が感じられて
なんだか胸が痛かったわ~。
宗盛&知盛&重衡が同腹トリオを形成してるしね。
しかも、後白河の誘いにも関わらず蓮華王院に行かない二条帝に
文句を言って清盛にド叱られ、
「自分の信じることを言う!」
と反発したら、
「俺の気持ちがわからない?
 わからなくてもいいが邪魔立てだけはするな!」
と捨て台詞まで吐かれる始末。
結局最後に、経子の前で笑顔で父を支えると宣言してたけど、
あの不幸顔のせいか、悪い予感しかしない……
清盛は前回、重盛に家盛を、基盛に自分を重ねて
語っていたけれど、損しがちな優等生も
ちゃんとフォローしてあげて!
(しかし、重盛はいったい清盛のどこを見て、
 あの決心に至ったのか……いまいちよくわからなかったわ)


さて、清盛界最強のファム・ファタルはたまこさま。
そして、その血を受け継ぐ後白河は清盛界最強の中2病。
息子が自分を立ててくれないうえに、
「蓮華王院を見てオレの力を思い知れ!」
と蓮華王院に誘うも、完全にスルーされる。
それどころか、息子は「親はいない」と発言。
そんな中、二条帝が病死。
鉦と太鼓と読経をBGMに、僧たちを引き連れて
ファンキーに葬儀の場に登場した後白河だが、
清盛に「相変わらず赤ん坊だ」と怒られたうえ、
「お前の息子、赤ん坊に国は任せられないって言ってたからな!」
とさらにショックを受ける一言。
馬鹿笑いするしかない後白河が、なんかかわいそうになっちゃった。
清盛は歳とってそれなりに成長してるのにね。


【その他いろいろ】
・今日は二条帝だけでなく池禅尼も退場。
 自分の息子・頼盛が、重盛にも追い抜かれて不遇の身と
 なっていることには、それなりに思うところあっただろうし、
 それを匂わせる空気もあったけれど、きっちり伏線張って退場。
 それにしても、家盛も頼盛も、
 宗子ママの息子たちはママ大好きだな。
 
みずらの憲仁が可愛すぎた。
 出番ちょっとだったけど、なにあの可愛さ!!
コメント (2)
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