外科研修中の話である。傷の縫合の腕を磨くために救急外来に張り付いていて、もしケガの患者が来れば自分が率先して診ていた時代があった。これは本当にいい経験になった。特にそこの病院では子供の怪我が多く、よく子供の縫合もさせてもらった。しかし子供でもまだ学童あたりは何とか聞き分けもあるのだが、特に幼児あたりではまったく何を言っても理解してくれない。ただ泣きわめいて大暴れするのみなのである。連れてきたお母さんに縫合中、暴れないよう抑えてもらおうとお願いしても、まったく役に立たない。抑え方が優しすぎるのである。まるで大岡裁きの話で、本当の母親が子供の手を強く引っ張れないのと同じなのである。ましてや祖父母の付き添いはもっと頭が痛いのである(私の)。彼らは、子供の既往歴や現病歴をよく知らない。こちらが子供のことを聞いても「さぁ~どうなんでしょう?」ときちんと答えられないことが多かった。その割にはこちらにいろいろと細かい質問を投げかけてくることが多かった。両親不在時の孫のケガなのでおそらく責任でも感じているのであろうか、両親からあとで聞かれてもいいようにその答えの準備と思われるのであった。<o:p></o:p>