
冬の夕暮れはしんしんと哀しく淋しい
漆黒の闇のなかへすとんと落ちて行く
春の夜のほんのり匂い立つ花や
夏の夜の蛍の緩やかな曳光も
秋の夜の誇らしげな月光も
なんにもない闇の中へと
闇の中に気配を探る
闇もまた私を伺っている
不眠という檻に囚われて
のっぺらぼうな不安がまといつく

私と闇とそして「在る」ということ
その境界が曖昧になって黒く流れる
不眠の夜はけっして明けない夜だ
眠りという再生から見放された夜
闇の覆いを退け時間を逆行させ
冬の夕暮れに戻らねばならない
かつて光のもとにあったという
かすかな痕跡を見い出すために

かくて深い闇のまっただ中で
かろうじて私は宙吊りになる
冬の夕暮れはしんしんと哀しく淋しい
しかし、まだ闇に屈したわけではない