陽気がよくなったので、母の入院先へも自転車で出かけます。
車より自転車の目線が好きです。ある程度の高さもあり、かつまた、そのスピード感からして周囲への観察能力が違うのです。さらにいえば、周辺の物音、鳥のさえずりなどがダイレクトに聞こえることです。
それだけなら、ある程度見聞が広がるのみですが、もっと決定的なのは、興味の対象を見つけた場合、多少の細い路地だろうがたんぼ道だろうがどんどん侵入でき、しかもそこで停車も駐車も平気なため、いろいろ写真を撮ることができるということです。
樹の上には白い月が
そんなわけで新しい発見を報告いたします。
車で行く際、そのルートとは少し離れたところに巨木ともいえる大きな樹木があり幾分気になっていました。そこで、自転車の気軽さ、細い路地を縫ってそこへと行ってみました。
遠目で確認した以上の巨木です。岐阜市指定の「天然記念物」になっている椋(ムク)の木だそうです。二本の樹木が寄り添うようにそびえています。そしてその間にはしめ縄が張られています。ようするに、ご神木なのです。
二本の樹の間には祠が
このご神木を擁する神社はさほど大きくはありません。ご神木はこの神社の背後にそびえていますので、神社そのものの正面に回ってみました。かつての農村であったたたずまいを残している集落での小さな神社です。正面からも写真に収めました。
そこへ都合良く、こぢんまりとした社務所で祭礼か何かの打ち合わせとしていたらしい地元の人が出てきました。チャンスとばかり私はそのうちのひとりをつかまえて尋ねました。
「このお宮さんは何という名前ですか?」
「あ、ここ?ここは稲荷神社だよ」
人を食った答です。いくら私がこうした事情に疎くとも、赤い幟に「正一位稲荷大明神」と書いてあったり、狛犬の替わりにお狐様が鎮座していたらお稲荷様だぐらいは分かります。
この右側が本殿
いらだつ気持ちを抑えながら、もう一度尋ねました。
「それは分かりますが、何稲荷なのでしょう」
「何稲荷といわれても、稲荷神社は稲荷神社だから・・」
と、相変わらず煮え切らない返事です。それでも、もう一度丁重に尋ねました。
「でもほら、伏見稲荷とか豊川稲荷とか、お稲荷さんにはその地名が頭につくでしょう?」
そうしたら、意外な返事が返ってきました。
「ああ、そのことですか。ここの地名は今でこそ福寿町とかいうことになってしまいましたが、前は<稲荷>というでした。だから、稲荷にある神社だたら稲荷神社なのです」
なるほど、稲荷にあるから稲荷神社、それにさらに地名を冠したら、「稲荷稲荷神社」になってしまうというわけなのです。
正面付近
ついでに面白い話を教えてくれました。ここのお稲荷さん、昔は近郷近在の善男善女で豊川や伏見などへ行けない人々がここへお参りしたそうなのです。そしてそれが、たいそう御利益があるという評判が立ち、著名なところへ行く必要がない美濃の稲荷としてとても栄えた時期があったそうなのです。おそらく、この地区が稲荷という地名になったのもそのせいなのでしょう。
地元の人たちは、その往年の誇りを保ちながら、ここのお稲荷さんを○○稲荷としてローカルにすることなく、稲荷地区の稲荷神社として、今もなお、ストレートなその名を守り続けているのです。
正真正銘、「稲荷神社」です
ほら、自転車っていいでしょう。とある大木に注目し寄り道をしただけで、これだけ中身の濃い話が聞けるのですよ。
話が面白かったので、つい、このムクノキの樹齢を聴くのを忘れてしまいました。
何歳でしょう?私よりも老けてはいると思うのですが(私は化け物か?)。
車より自転車の目線が好きです。ある程度の高さもあり、かつまた、そのスピード感からして周囲への観察能力が違うのです。さらにいえば、周辺の物音、鳥のさえずりなどがダイレクトに聞こえることです。
それだけなら、ある程度見聞が広がるのみですが、もっと決定的なのは、興味の対象を見つけた場合、多少の細い路地だろうがたんぼ道だろうがどんどん侵入でき、しかもそこで停車も駐車も平気なため、いろいろ写真を撮ることができるということです。
樹の上には白い月が
そんなわけで新しい発見を報告いたします。
車で行く際、そのルートとは少し離れたところに巨木ともいえる大きな樹木があり幾分気になっていました。そこで、自転車の気軽さ、細い路地を縫ってそこへと行ってみました。
遠目で確認した以上の巨木です。岐阜市指定の「天然記念物」になっている椋(ムク)の木だそうです。二本の樹木が寄り添うようにそびえています。そしてその間にはしめ縄が張られています。ようするに、ご神木なのです。
二本の樹の間には祠が
このご神木を擁する神社はさほど大きくはありません。ご神木はこの神社の背後にそびえていますので、神社そのものの正面に回ってみました。かつての農村であったたたずまいを残している集落での小さな神社です。正面からも写真に収めました。
そこへ都合良く、こぢんまりとした社務所で祭礼か何かの打ち合わせとしていたらしい地元の人が出てきました。チャンスとばかり私はそのうちのひとりをつかまえて尋ねました。
「このお宮さんは何という名前ですか?」
「あ、ここ?ここは稲荷神社だよ」
人を食った答です。いくら私がこうした事情に疎くとも、赤い幟に「正一位稲荷大明神」と書いてあったり、狛犬の替わりにお狐様が鎮座していたらお稲荷様だぐらいは分かります。
この右側が本殿
いらだつ気持ちを抑えながら、もう一度尋ねました。
「それは分かりますが、何稲荷なのでしょう」
「何稲荷といわれても、稲荷神社は稲荷神社だから・・」
と、相変わらず煮え切らない返事です。それでも、もう一度丁重に尋ねました。
「でもほら、伏見稲荷とか豊川稲荷とか、お稲荷さんにはその地名が頭につくでしょう?」
そうしたら、意外な返事が返ってきました。
「ああ、そのことですか。ここの地名は今でこそ福寿町とかいうことになってしまいましたが、前は<稲荷>というでした。だから、稲荷にある神社だたら稲荷神社なのです」
なるほど、稲荷にあるから稲荷神社、それにさらに地名を冠したら、「稲荷稲荷神社」になってしまうというわけなのです。
正面付近
ついでに面白い話を教えてくれました。ここのお稲荷さん、昔は近郷近在の善男善女で豊川や伏見などへ行けない人々がここへお参りしたそうなのです。そしてそれが、たいそう御利益があるという評判が立ち、著名なところへ行く必要がない美濃の稲荷としてとても栄えた時期があったそうなのです。おそらく、この地区が稲荷という地名になったのもそのせいなのでしょう。
地元の人たちは、その往年の誇りを保ちながら、ここのお稲荷さんを○○稲荷としてローカルにすることなく、稲荷地区の稲荷神社として、今もなお、ストレートなその名を守り続けているのです。
正真正銘、「稲荷神社」です
ほら、自転車っていいでしょう。とある大木に注目し寄り道をしただけで、これだけ中身の濃い話が聞けるのですよ。
話が面白かったので、つい、このムクノキの樹齢を聴くのを忘れてしまいました。
何歳でしょう?私よりも老けてはいると思うのですが(私は化け物か?)。