岐阜駅の南側に、清水川という川があって、私の子供の頃は所々で自噴が見られ、文字通りの「清水」川でした。しかし、高度成長期の垂れ流しと地下水の過剰な汲み上げで、一時はその名前が泣くような川に変わり果ててしまいました。
それから幾年かを経て、岐阜駅周辺の再整備にあたり、清水川の浄化と環境整備のプロジェクトが進められることとなりました。その折、水生動物の専門家として、これに参加されたのが私の高校時代の生物の恩師、後藤宮子先生でした。
この後藤先生、長良川の生態系の変化をフィールドワークを通じて観察し続け、その膨大なデータは現在京都大学に収められています。
そして、そのデータから、長良川河口堰の生態系に及ぼす破壊的な影響を指摘され、河口堰反対の有力な論客として活躍してこられました。
そんな経緯もあって、岐阜駅の近くに用件があり、時間に余裕がある時にはしばしば、清水緑地と名付けられた一帯を散策します。
一旦はドブ川になった川に清流に住む魚たちが戻り、水中で鱗をきらめかせて反転するのを見たり、川面に水生昆虫たちが行き交うのを見ることは心地よいものです。
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昨日立ち寄った折には、川岸近くで戯れるモンシロチョウのつがいを見かけました。懸命に追いかけたのですが、いっときもじっとしていないから大変です。
私の腕と携帯のカメラでは上の写真が限界です。
彼らを見ながら、「蝶々」という歌を思い出しました。
「菜の葉にとまれ」でもなく、シューマンのピアノ曲作品2でもありません。1969年に坂本九が歌った曲です。
この歌、その歌詞にある「上になったり下になったり蝶々っていいな」というくだりが卑猥だというので放送禁止になりました。なんでそんなことを覚えているかというと、放送禁止になる直前にTVでその歌を聴いたからです。
その折、「面白い歌だけどちょっとやばいかな」と思ったのです。もちろん放送禁止にすべきだと思ったわけではありませんよ。その頃の一般通念からいってやられるのではないかなと思ったのです。果たせるかな、見事に放送禁止です。お陰で、私の頭にははっきりとそれが印象づけられたという次第なのです。
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この緑地にはいろいろな花が咲いています。多分これは花菖蒲だと思うのですが大ぶりで立派な花をつけていました。
ちょっと淡い面白い色ですね。
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まあしかし、この時期外せないのが紫陽花でしょう。
まあるく弧を描く花の形、土地の成分や時期によって変わる花の色合いなどはやはり梅雨を彩る女王の風格に満ちていますね。
カタツムリなどはいないだろうかと探しましたがそんなに都合良くはゆきません。そのかわりミツバチがお食事中でしたのでそれをカメラに。
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水辺を離れて公園の噴水池の近くに差し掛かると幼稚園児たち(どういうわけかほとんど女の子)が水辺にしゃがみこんで何かをしています。
「何してるの?」
と、尋ねると、
「あのね、お舟を浮かべるの」
とのことです。
確かに、笹の葉がありそれらをいじっているのですが笹舟にはなりません。くしゃくしゃになった笹を浮かべるのですが、それくらいなら笹の葉をそのまま浮かべたほうがいいようです。
どうやらこの子たちは、笹の葉が舟になるよぐらいにいわれているのみで、その作り方を教えてもらってはいないようなのです。
「おじさんが作ってみようか」
といって昔とった杵柄で、笹を折り曲げ、三等分に切ってその左右を互いに差し込む舟を作り水に浮かべました。舟は風にのってスイスイと進みます。
はじめ訝しげだった子らの視線が感嘆に変わりました。
「おじさん(おじいさんじゃァありませんぞ)私にも」
と笹が手渡されます。
それを作り終えると次々に「私も」の声。
私の前には時ならぬ行列が・・・・。
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その騒ぎに気づいた若い女性の先生がやって来ましたが、私が笹舟を作って手渡しているのを見ているだけでなにもいいません。
「いや、ひとつ作ったらこの騒ぎになりましてね。出すぎたことで申し訳ありません」
と、私。
「いえ、いえ」
と先生。
私としては
「笹の葉で舟ができるよというだけではなく、ちゃんと具体的にその作り方を教えたほうがいいのじゃないですか」
と、いいたかったのですが言葉をのみました。
その先生の視線を見ていると、どうやら彼女も笹舟の作り方など知らないようなのです。
彼女自身の年齢や育った場所からしてそうした機会に恵まれなかったのかもしれません。
「あ、どうもすみませんでした。これで失礼します」
と、私。
「いいえ、ありがとうございました」
と、先生。
子供たちがバイバイと手を振ってくれました。
空には雲が垂れ込めていますが、まだ雨らしい雨は降りません。