*写真は関係ありません。部屋の眼下に咲いた柾(マサキ)の花
悪夢の後に目が醒めて、その後、寝付かれないままという日がここ二、三日続いている。結果として睡眠不足で、昼間しなければならないことが手につかず、あるいはちゃんとこなすことができず、気だるさのみがまとわりついて離れない。
年に何回か周期的にやってきて一週間ぐらいは続く持病のようなものだ。

昨夜は特にひどかった。
どうやら人を殺してしまったようなのだ。こんな夢ははじめてだ。
さいわい、殺す場面そのものは出て来なかったので不快極まりない思いは免れたのだが、その後、逃げ回っているところから夢は始まった。
どうして虫も殺せないこの善良を絵に描いたような私(自分がいうのだから確かだ)が、人を殺す羽目になってしまったのかはさっぱりわからない。
もっと不思議なのは、ある女性と一緒に逃げているのだが、その女性こそ私が殺してしまった当の被害者なのだ。
といっても知っている女性ではない。それどころか、おそらくこれまでの生涯にはまったく出会ったことのない女性なのである。
歳の頃は4、50代だろうか、なかなか知性的な顔立ちで、髪型はおかっぱ風だった。声は落ち着いたアルトで、言葉付きや話す内容もしっかりしている。

いっておくが決して私が強要して一緒に逃げているわけではない。
それどころかこの女性、私に殺されたにもかかわらず私と一緒に逃げているのみか、その逃走についてじつに適切なアドヴァイスまでしてくれるのだ。
私はまるでその人の弟のように、すっかり頼りきって逃避行を続けるのだった。
いつか私は、このままずーっと一緒に逃げていたいと思うようになったのだが、夢のなかとはいえ事態はそれほど甘くはない。
ついに私は(私たちは?)丘の上の一軒家で警官隊に包囲されてしまった。
もはや、逮捕は時間の問題。
そのとき彼女が耳元で言ったのだ。
「いいのよ、ちゃんと私がいってあげるから」
ここで目が醒めた。
「私がいってあげる」っていったい何をいってくれるつもりだったのだろうかと半ば夢うつつのなかで私は考えていたが、むろんわかるはずはない。

接写にすると・・・
それからがいけない。
すっかり目が冴えてしまってもう寝付けないのだ。
で、当然、その夢のことを考える。
フロイトなど少しは読んでいるものの、無論、夢判断や分析など到底できないし、例えしたところで、まあ、一種のこじつけにしか過ぎないことだろう。
しかし、凄惨な場面はなかったとはいえ、自分が殺人者になったというのは少しショックではある。まあ、空想のなかでは消してやりたい奴がいないではないが、それを現実に考えたことはない。
ましてや、夢のなかでの女性は好ましい印象こそあれ、殺すほどの憎悪の対象には決してならないタイプであった。

やってきたアオスジアゲハ
そんなことを考えていたら一時間はとっくに過ぎて二時間に迫ってしまった。改めて睡眠薬を飲もうかと思ったが、この時間に飲むと朝まで残ってしまってまたまた困ることになる。
それやこれやで、やっと浅い眠りについたかと思ったらけたたまし目覚ましに叩き起こされた。

ホタルに似ているが残念ながらほかの虫
おかげで頭は鉛詰めの状態で熱っぽいようでもあるが、しなければならないこともあるので床を離れた。
その後、一応すべきことをしたので少し昼寝でもと思ったが、あと一時間ほどで別の予定が入っているのでその間にぼんやりした頭のままこれを書いている。
今夜また、あの女性に会えたら、あなたを殺したことは間違いであったとちゃんと謝れば、中途覚醒の悪習は解消するだろうか。