うちの洗濯干場の付近で、二種類のバッタを見かけてスマホで撮った。
一種は見た通りのオンブバッタ。オンブバッタは通称だと思って調べてみたら、れっきとした和名だという。
形態はショウリョウバッタに似ているが、それより小型で、名前の通り、交尾時以外でもやや小さいオスがメスの背中に乗っていることが多い。
これは最近でもよく見かける。
もう一種はやはり小型のバッタで、最近ほとんど見かけないので、もしやと思って図鑑で検索したら、やはりイナゴのようだ。
五〇年以上前、ここに住み始めたころ、うちは田んぼに囲まれていた。そしてその田んぼには、イナゴが数多く棲息していた。イナゴの習性は面白く、見つけて獲ろうとすると、稲の茎をくるくると回ってこちらの視覚の反対側へ移動する。まるで、自分から見えなくなると相手も見えなくなるかのようなふるまいだ。だから、稲の茎を包み込むように手を伸ばして掴むと容易に穫れる。
獲ったイナゴは袋に入れて一日ほど吊るしておく。すると、そこで糞を排泄して体内がきれいになる。
頃合いを見計らって、熱湯などで息の根を止め、ぴょんと飛ぶための太い後ろ足と翅をむしって取り去ってから調理する。
調理は、フライパンで炒って甘辛醤油を絡める、あるいは佃煮にするなど。または唐揚げにしてもいい。それらを数回作ったことがある。
しかししばらくすると、農薬の影響だと思うが、田んぼでのイナゴはほとんど絶滅した。稲をよく観察しても、いまや彼らの姿を見ることはない。かつては、田んぼの傍らを通りかかっただけでうるさいくらい足元からピョンピョン跳び立ったのに。
おそらく、田んぼ以外のところでほそぼそと生き延びているのであろう。そのうちの一匹が私の目に止まったのだ。もう獲って食べようとは思わない。農薬に負けず生き延びよとエールを送るのみだ。
【付】イギリス政変 トリクルダウンの失敗