きっと、いいことあるよね!

母(sake)と息子(keke)の日々の記録。
お出かけ写真と料理など。

父との会話

2009-04-26 | 父の記録と母の思い出
父に会いに行った。

かえって平日より早く家を出る。
バスに乗ると、「いつか見ましたよね?」とバスのおじさんが言う。

「先週乗りました。」
「あぁ、お父さんが入院した方ね。」


父は「お嬢さんです」と言われても最初はよく分からないようだ。
「sakeだよ」と言うと分かる。
目がよく見えないのかもしれない。

今日はいろいろ話が出た。

「kekeは幾つになったか。」
「大学に入ったばかりだよ。」

「みんな元気か。」
「元気だよ。」

「みんなどうしてるんだ。」
「ミーちゃんは中学に入ったばかりだよ。」
「そうか。」

「退屈だな。どこに住んでいるんだっけ。今度会いに行くよ。」
「うん。」

「今度みんなで食事でもしよう。」
「うん。カラオケもしようね。」
「そうだな。」

ほとんどこの会話を1時間繰り返していた。
でも、楽しかった。

「何しにきたんだ」も何度も訊かれた。
「おじいちゃんに会いに来たんだよ」と言ったら、珍しいなと言って喜んだ。

「みんなよくしてくれるよ。」とも言っていた。
「でも、身内がいないからな。」とも言っていた。

現役の頃の父は出世もしたけど偉そうで、外食とかに行った時に忘れたように来ないメニューがあると、店員にイヤミを言った。
そんな父がうちら(私と妹)はいつも恥かしくてイヤだった。

それがボケてから、父は周りに文句をいう事もなく感謝して生きている。
妹の事もそうだったし、みんなが好きな父。
このギャップが不思議でならない。
これが本性だったのだろうか。
私はボケたらどうなるんだろう。さぞかし性格悪になるだろうか。
(見たところ、女の人はそう言うパターンが多そう)

周りを見渡すと、車椅子で仰向けに眠ったまま口をもぐもぐして朝ごはんを食べさせてもらっているお婆さんとか、今週もうろうろ徘徊して隙あらばEVに乗ろうとしてるお爺さんとか、うーうーわめいているお爺さん、サイフから1000円札を取り出して、ここから帰るにはどうしたらいいのか大声で看護婦さんにしゃべっているお婆さん(この方だけはサイフが手放せないよう)とか、気さくな父でもさすがにここでは友達を作るのは難しいと思われた。
 
こうしてみると、父だけはまだ会話も成り立つし、顔の表情も普通に変わった。
ここでは優等生の父。(だと思う)
精一杯これがよそ行きのポーズなのかもしれない。

バスの時間が近づいてきたので、それじゃ帰るよと言うと、ヨチヨチ歩きながらEVのドア所まで見送ってくれた。
ここから先は父はこれない。
悲しくなりそうで、振り返る事もできずにEVに乗る。

妹ももっとこんな思いをしているのだろう。


バスのおじさんは「次のバスでもいいんだよ」と言う。
「次は何時ですか?」と訊くと、2時間後だと言う。
「やっぱりこれで帰ります。」と言うと、そうかい、またちょくちょくおいでよ、と言う。

駅に着く。
店がボチボチ開き始めてくる。

静かに日曜日が始まっている。