津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

読書三冊

2006-08-14 18:46:40 | 書籍・読書
1、「日本のいちばん長い日」角川文庫・昭和48年初版 大宅壮一編
    この本は当時文芸春秋の副編集長であった半藤一利(現作家・夏目漱石
    女婿)等が編集に当たったもので、大宅壮一を編者として発行し大反響を
    得た。大宅壮一亡き後、遺族の了解の下半藤の著作として発行されてい
    る。ポッダム宣言受諾の為にいわゆる天皇のご聖断を得た後の昭和20年
    8月14日正午から、翌15日の玉音放送に至るまでの24時間のドキュメント
    である。61年前の今日のことであるが、歴史の転換期の生みの苦しみが
    ひしひしと伝わってくる。歴史の真実を心に留め、平和のありがたさを後世
    に伝えるためにも、若い人たちに是非読んでいただきたい著作である。

1、森鷗外著「堺事件」
    慶應四年に堺で起きた土佐藩士によるフランス艦乗員襲撃事件を題材にし
    た著作である。フランス艦乗組員の上陸は無許可のものであり、警戒に当
    たった土佐藩士との間にいざこざが起こり、逃げ帰る短艇に対しての射撃
    が悲惨な結果を招いた。フランス公使の強硬な申し入れにより、土佐藩士
    20名に切腹の沙汰が降りる。従容として死に臨む藩士たちに対し、立ち会
    った公使以下のフランス兵士たちは、恐れおののき途中で退座してしまう。
    このために数名の藩士が命を永らえることになるのである。
    鷗外の一部の作品は、乃木希輔将軍の明治天皇殉死後にいわゆる「殉
    死」を賛美する形で書れ、いろいろ論議されている。とくに「堺事件」は真
    実と異なることが多く(らしい)作家大岡昇平が痛烈な批判をしている。
    読者はこれらの著作を歴史の真実として読んではならない。
                             (ということか)

1、切絵図・現代図で歩く江戸東京散歩 人文社
  桜田門外の変 杵築史談会刊行
    現在の警視庁辺りに杵築藩松平中務大輔の屋敷があった。桜田門が目の
    前である。安政6年3月3日杵築藩士たちは、節句の美麗な大名行列を見よ
    うと、お長屋の無双窓を少し開いて外を覗いていた。そとは雪である。武鑑
    を手に同じく行列を待つ人たちの姿が見える。国会議事堂前庭あたりに有
    ったのが、時の大老彦根藩井伊家の藩邸である。大きな扉が開き行列が
    進んでくる。そして杵築藩士たちは、事件の一部始終を目の辺りにすること
    になるのである。「桜田門外の変」はその中の一人が書き綴ったものであ
    ろう。底本は写本であるらしく、編者はそのことを強調されている。
    しかしながら、臨場感に満ちた筆致にしばし引き込まれてしまう。事件後
    浪士たちは大手門の方へ逃走する。幾人かは途中で自害。大老の首も誰
    の者かもわからぬままに、一人の浪士の遺体とともに若年寄遠藤但馬守の
    屋敷に運び込まれる。和田倉門の前辺りである。一部浪士は細川家にも逃
    げ込んでくる。現在の東京駅前(丸の内1丁目)である。
    史料も切絵図を手許において眺めると、又一段と面白い。
    ちなみにこの本は、M氏からお贈りいただいたものである。深謝。

    過日「桜田門外ノ変」の著者吉村昭氏が亡くなった。ご冥福をお祈りする。
    浪士達の苦悩が見事に表現された素晴らしい著作だった。
  
コメント
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