北京に「798芸術区」があるように、上海の莫干山路という通りには無数のギャラリーがあり、「M50」と称している。先週、空いた時間に脚を運んだ。
■ 青年芸術家連展 (M ART CENTER >> リンク)
タイトルの通り、20代、30代の何人ものアーティストたちによる作品を紹介している。いつものことだが、大勢での展示は玉石混交、しかも歩き始めたばかりで気分の余裕がないため、琴線に触れるものがあまりない。その中でも、袁侃(カン・ユアン)という彫刻家による運動的な作品は(いまどき未来派風でもあり)良かった。
袁侃
ここで、番をしていた人に、写真のギャラリーに行きたいのだけど、と尋ねたところ、一杯あるけど・・・と言いつつも3か所の推薦をしてくれた。そのうち2か所(M97、EPSITE)を後で見つけた。
■ 孫驥(スン・ジ)+陸軍(ルー・ジュン) (M97 >> リンク)
孫驥(スン・ジ)の「Memory City」と題された作品群は、建築写真のコラージュだ。魔都上海の雰囲気はあれど浅いという第一印象。ただ大きなプリントはそれだけで複層都市の迫力を持ち、また取り壊し対象を意味する「拆」という印が描かれた建物が組込まれており、壊れゆくイメージを孕んでいる点に好感を持った。
孫驥
陸軍(ルー・ジュン)の作品群は「Photografic Ink and Wash」と題されている。デカルコマニーのような効果や写真をどのように取り込んでいるのかわからないが、コンピュータ処理だろう。現代的な水墨画だ。
陸軍
他の写真家による作品も少しずつ展示されている。なかでも、雪が積もった中国の道路脇、電柱の下に2人が座り込み、その横で花火が燃えているインスタレーションを撮った蔣志(ジャン・ツィ)の作品が良かった。風景がいかにも中国で移動しているときに見るもので、そこに人工的で野蛮な光が無理やり入ってくることにはかなりインパクトがある。
蔣志
■ クリス・レイニアー (EPSITE)
米国の写真家レイニアーが、非西洋文明の地を巡って撮った作品群。エプサイトは新宿にもあるが、エプソンがインクジェットプリンターの能力をアピールするという目的もあるから、ここでも当然インクジェット。デジタルはどうしても「色気」がないように感じられ、マリ共和国やアンコールワットなど訪れてみたいところの写真があっても気分が盛り上がらない。ただ、そのような地でのピンホール写真もあり、これはユニークな出来栄えだった。
■ クリストファー・テイラー (Ofoto Gallery >> リンク)
テイラーは英国の写真家。幼少時に壁に貼ってあった写真から中国への興味を持った、と言っているように、スタンスは外部からの訪問者のそれだ。関係してかどうか、<もの>の表面やディテールやマッスを凝視するまなざしには共感した。銀塩プリントは素晴らしい。
以前に北京でも観た、ロバート・ファン・デア・ヒルストのセルフポートレートもあった。
(続く)