家族が出払っていることもあり、友人たちとランチを画策したら、映画を観てからにしようということになった。久しぶりの恵比寿ガーデンシネマで、『縞模様のパジャマの少年』(マーク・ハーマン、2008年)を観る。
父親はナチスの軍人。家での「昇進」お祝いのパーティーでも軍服であらわれ、悲しそうに諌める母親に、こっそりと激しく、そんなことを人前で口にしないでくれと封じる。そして少年、姉と従順な母親を含め、家族4人で郊外へと引っ越す。そこは異様な場所だった。家から外に出ることはできず、使用人のユダヤ人を奴隷以下のように扱う軍人たち。
少年は裏窓を覗き、「農場」を発見する。それは強制収容所だった。強制収用所の一画には、ユダヤ人を「処分」する場所があり、常に耐え難い臭いの煙が立ちのぼっていた。遊びに行ってはいけない場所、しかし少年は同年齢の友だちを見つけ、有刺鉄線ごしに話をするようになる。その下は、簡単に掘ることのできる柔らかい土だった。
少年がいなくなったことに母親が気付き、探しはじめたとき、父は軍人たちと「処分設備を3倍にする」計画を練っている最中だった。因果応報、ホロコーストの「しわ」は、血で汚れたおのれの、無知で純真な息子に寄せられてしまった。
メッセージ性は明確すぎるほどわかりやすい。だが、フィクションとはいえ、イノセントな子どもを劇のダシに使うのはやめてほしい。そして、夫の仕事を知った妻の取り乱しようは不自然だ(いくらなんでも、ナチス将校の妻として、何か知っていただろう?)。登場人物それぞれを典型的な鋳型に当てはめすぎた劇だという印象が強い。よく出来てはいるし、「アメリカ」「中国」「イスラエル」「北朝鮮」など、かたまりでしか物を見ない人にはぜひ足を運んで欲しいとは思ったものの。
ガーデンプレイスの中はハイソ向けなので(笑)、駅近くの韓国料理屋でスンドゥブ鍋(豆腐チゲ)を食べて、コーヒーを飲んで帰った。夜になって、なかなか子どもがいるとできない暗室作業(というほどのものではないが)をはじめたら止められなくなって、寝不足になってしまった。