仕事帰りに、鈴木雅之『プリンセストヨトミ』(2011年)を観る。万城目学の小説が矢鱈と面白かったので、見逃すわけにはいかない。
会計検査院による大阪府の検査、そのリーダーの個人史、大阪国誕生史、女性になりたいお好み焼き屋の息子と大阪国女王、と、4つの物語をうまくまとめている。勿論小説でのディテールはバサバサと端折られているが、さほど違和感はない。
しかし、コンパクトにまとめたところが達成点に過ぎない映画である。こまかな設定やエピソードはともかく、大阪の魅力をもっと見せつけなければいけない。堤真一や中井貴一といった「味顔」の芸達者たちの存在感に助けてもらって成立してはいるが、演出は駄目である。何しろ説明過多であり、映画的間合が皆無だ(セザンヌの塗り残しを見習うべきだ)。振り向いて想いを込める表情、仲間や近い人物にひそかに微笑む表情、そんなもので大団円ならぬ小団円を作りあげようとするなど下の下である。
愉しんだのではあるけれども。
●参照
○万城目学『プリンセス・トヨトミ』