バート・スターン『真夏の夜のジャズ(Jazz on a Summer's Day)』(1958年)。同年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルとそれを愉しむ人たち、海や街の様子を捉えたフィルムであり、ジャズ映画としてはもっとも有名な作品のひとつだ。六本木にあったシネ・ヴィヴァンだったか、1996年頃に再上映され、大スクリーンでの映像にひたすら感激した記憶がある。輸入VHSを持っていたが、いまではサントラCD付きのDVDを1500円で買うことができる。
改めて観ると、魅力的な場面が散りばめられていることがわかる。
竹フレームのサングラスとくしゃくしゃのスーツを着たセロニアス・モンク、何てヒップなんだろう。確かステージ直前にドラッグをやっていたアニタ・オデイ、ハスキーな声と余裕綽々な押し引きが素晴らしい。バリトンサックスを軽々と吹きならすジェリー・マリガン。ダイナ・ワシントンのキインと通るヴォイス、後ろの愉しそうなマックス・ローチ。唾吹きのハンカチを持って唯一無二のトランペットの音を響かせるルイ・アームストロング。観客を黙らせてしまう、マヘリア・ジャクソンの圧倒的に深いヴォイス。
バート・スターンはもともと写真家であり、DVDに付いているスターンの独白でも、何度も「ストレート・フォトグラフィ」に言及する。マリリン・モンローが亡くなる直前、プライヴェートなヌード写真を撮った作品がある。確かネガにモンロー自身がペンでバッテンを描き入れたものだったはずだ。特集された雑誌を持っていたが、どこかに消えてしまった。誰だ、持ち去ったのは。