飯田橋のギンレイホールで先週観た、ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン『トゥルー・グリット』(2010年)が面白かった。映画館でコーエン兄弟を観るのは、『ファーゴ』(1996年)以来だ。
ウェスタンもコーエン兄弟の手にかかると、これほどに小気味良く斬新なのだなと思わせてくれる。時にスクリューボール・コメディーのようであり、またビリー・ワイルダーのようでもある。というのは、俳優ひとりひとりがセリフごとにケレン味たっぷりのパフォーマンスを見せる、その切り返しがワイルダーを思わせるのだ。
また、クローズアップ(蛇に咬まれた少女を乗せて走る必死の馬の横顔など)や、奇抜な角度での撮影(馬で走りながら、既に倒した相手の姿を見るショットなど)といった撮り方が、まるで、蛭田達也『コータローまかりとおる!』のような超高水準のアクション漫画のようでもある。
老保安官を演じたジェフ・ブリッジスの、やはりケレンが凄い。自分の記憶のなかでは、『恋のゆくえ』(1989年)の色男でとどまっていた。あれから20年以上経っているのだから当然だ。
大傑作だと評価するつもりは毛頭ないが、セリフも練られた佳作であることに間違いはない。
コーエン兄弟はやっぱり素晴らしいなと思い、ついでに、録画しておいた『バーン・アフター・リーディング』(2008年)を観る。読み終わったら燃やせ、つまり、昔のスパイ番組を想起させながら、CIAや諜報活動をコケにした映画である。これもやはりアクション漫画的。ジョン・マルコヴィッチも、ジョージ・クルーニーも、ブラッド・ピットも、フランシス・マクドーマンドも、悪乗りの許可を与えられて遠慮せず暴れているような感覚である。何度か腹が痙攣しそうになった。
それにしてもマルコヴィッチ、『コン・エアー』(1997年)といい、『RED』(2010年)といい、イってしまった化け物を演じても超一流。