Sightsong

自縄自縛日記

ニコラス・エチェバリーア『カベッサ・デ・バカ』

2011-07-23 10:19:06 | 中南米

ニコラス・エチェバリーア『カベッサ・デ・バカ』(1991年)を初めて観たのは、1997年の「メキシコ映画祭」においてだった。その後英語字幕版のVHSを入手し、何度も観ている。改めて観ても面白い。



「メキシコ映画祭」パンフレット(1997年)より

カベッサ・デ・バカはスペイン・セビリア出身の探検家である、というと聞こえはいいが、「白い侵略者」であり「treasurer」だった。1528年にフロリダに上陸、8年間の放浪と虜囚を経て、母国スペインの組織的な侵略者たちに遭遇する。コルテスの上陸とアステカ王国征服より後である(上陸地点を含め、「メキシコ映画祭」パンフレットの解説は間違っている)。

バカが住民に捕えられ、両腕のない小人の王や魔術師に翻弄され、そのうちに自らが死んだ女性を生き返らせる魔術師と化す様は、まさに、かつてラテンアメリカ文学を表現する際に用いられた「魔術的リアリズム」そのものだ。上陸時の仲間に遭遇するも、彼らは空腹のあまり、死んだ仲間の肉を食べては生き延びていた。

そして8年後、彼らはスペインの軍隊に取り囲まれる。侵略者は、大聖堂を建築するのに奴隷がさらに何百人も必要だ、住民に人望のあるお前が集めてくれ、と命令する。バカは既に侵略者ではなかった。建築中の大聖堂や奴隷たちを指さし、ここはスペインなのか?と絶叫する。もちろん新たに「発見」された土地は、コロンブス後、スペイン人の見地からはすべて法的にスペインのものだと見なされていた。


増田義郎『物語ラテン・アメリカの歴史』(中公新書)より

一方、バカのかつての仲間は、救出された後、得意になって酒を飲みながらほら話を繰り広げる。虜囚されていたときに「3つの乳首を持つ女」と交わるように強制されたが他は普通だったぜ、と笑わせ、黄金の町があったと場を盛り上げる。黄金帝国を探す野望が漲っていた時代だった。

●参照
ジャック・アタリ『1492 西欧文明の世界支配』
マノエル・ド・オリヴェイラ『コロンブス 永遠の海』


浦安「九州部屋」のちゃんぽん

2011-07-23 00:22:58 | 関東

以前から記者のDさんが薦めまくっていて、行友太郎・東琢磨『フードジョッキー その理論と実践』(ひろしま女性学研究所、2009年)でも触れている、浦安駅前の「九州部屋」。また行こうと思いつつはや幾年、ようやく暖簾をくぐった。松中信彦の200本塁打記念タオルやら石原裕次郎カレンダーやら何かの歯やらボクシングのカレンダーやら、何だか小カオス。テレビには「アナログ放送終了まであと2日」と表示されている。ご主人曰く、「放送が切れる瞬間を見たいと思ってね」。

とりあえずビールの小瓶を呑みながら、スポーツ紙の松井500本塁打特集を読みながら、ぽつぽつご主人と話しながら、ちゃんぽんが出来上がるのを待つ。ぜんぜん焦ることなくゆっくりと調理している。

お待ちどう様のちゃんぽんには、帆立、海老2尾、いか、豚肉、白菜、人参が豪勢に乗っている。当然のように汁にはすべて味が溶け込んでいる。そして、食べ終えてもさらりとしている。旨い。

●参照
行友太郎・東琢磨『フードジョッキー』