ジョニー・トー『柔道龍虎房』(2004年)を、BS11が放送してくれた。こういう企画はとても嬉しい。
主役は、路上でも店の中でも腕利きに戦いを挑みたくて仕方のない男と、かつて柔道で名を馳せたが今はただの飲んだくれ(ルイス・クー)。さらに、台南から台北を経て、香港で歌手としての成功を夢見る女性。ヤクザからオカネを盗んだり、突然この3人(サックス、ギター、ヴォーカル)でパフォーマンスをしたり、賭けに負けてオカネを必死で持ち逃げしたりと、相変わらず訳が解らない抱腹絶倒のエピソードだらけだ。柔道の投げ技はイマイチなのだが。
ルイス・クーはジョニー・トーの『エレクション』連作では迫力ある二枚目だったが、このようなコミカルな演技も巧い。彼はトーの新作コメディ『単身単女』(2011年)にも出ているようで、期待感が高まる。
本作は黒澤明『姿三四郎』へのオマージュだそうで、なるほど、最後は草っ原での対決場面である。ルイス・クーの相手はレオン・カーフェイ(つまりこれが檜垣源之助)、粋な悪役がハマりすぎるのは、まるで仲代達矢だ。その横では、会う人ごとに「俺は姿三四郎、お前は檜垣源之助」と言ってのけるおかしな男が、姿三四郎の歌を吟じ続けている。何でしたっけ。
『映画秘宝』2006年1月号より
ところで、映画の中で日本の芸能プロダクション社員らしき男が出てくるが、彼はトー映画専属のスチールカメラマン・岡崎裕武である・・・とは、『映画秘宝』2006年1月号のジョニー・トー小特集で自ら語っていることで、それによると、やはりトーは相当のカメラ好きらしい。今まで映画やインタビュー映像に登場した数々の銘機(コンタレックス・ブルズアイ、ツァイスイコン・ホロゴンウルトラワイド、バルナック型ライカ、ペンタックスZ-1P、ポラロイドSX-70など)がトーの私物かどうかについては触れられておらず、いまだ不明である。
『映画秘宝』誌には、ホイ・シウホンが笑福亭鶴瓶などと書いてあるが、いやいや、どう見ても渡辺喜美(みんなの党)である。それを含め、ジョニー・トー作品の常連の影武者を連れてくるなら。
■ アンソニー・ウォン ・・・ 宍戸錠(日活アクション)
■ ラウ・チンワン ・・・ 宮沢和史(THE BOOM)
■ ホイ・シウホン ・・・ 渡辺喜美(みんなの党)
■ サイモン・ヤム ・・・ 佐々木則夫(なでしこジャパン監督)
●ジョニー・トー作品
○『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(2009)
○『文雀』(邦題『スリ』)(2008)
○『僕は君のために蝶になる』(2008)
○『MAD探偵』(2007)
○『エグザイル/絆』(2006)
○『エレクション 死の報復』(2006)
○『エレクション』(2005)
○『ブレイキング・ニュース』(2004)
○『PTU』(2003)
○『ターンレフト・ターンライト』(2003)
○『スー・チー in ミスター・パーフェクト』(2003)※製作
○『デッドエンド/暗戦リターンズ』(2001)
○『フルタイム・キラー』(2001)
○『ザ・ミッション 非情の掟』(1999)