Sightsong

自縄自縛日記

藤原新也『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』、ドラマ『永遠の泉』

2012-06-23 23:47:11 | 思想・文学

藤原新也『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』(河出文庫、原著2009年)を読む。

このひとの、潔く、それでいて思いを込めた文章は、以前から好きだ。読んでいると内省的になっている自分を発見することも少なくない。逆に、抒情的なつもりで、冗長に、自己愛と甘えを垂れ流す文章は多い。

本書は、「どこにでもいる普通の人々」の生き方や心の中に触れ、実話ともフィクションともつかないような作品に仕立て上げた短編集である。それらは哀しく、大きく心を動かされるというよりは、目を閉じて、混沌を感じたくなるようなものだ。登場する人物たちは、死の影をまとった幽霊のようで、また、実体の定かでない霧がかった時空間のなかで何かを必死につかもうとしているようでもある。

本当は、「普通の人々」などは存在しない。人はそれぞれ違うものを抱えている。芸能人や有名人以外は「一般人」と呼んで区別するなど、大変な思い上がりであり、傲慢である。そんな社会だから、みんなが劣等感を抱え、嫉妬に苦しむことになる。

短編「尾瀬に死す」は、先日NHKで放送されたテレビドラマ『永遠の泉』の原作である。ドラマの舞台は、尾瀬ではなく、阿蘇となっていた。ドラマの撮影は、やたらと横方向にレンズをティルトしていたり、フィルターワークによって夢のような世界を創りだそうとしていたりと、やや作為的ではあった。しかし、寺尾聰の演技が素晴らしく、印象深いものだった。

●参照
藤原新也『なにも願わない手を合わせる』


オスプレイの危険性

2012-06-23 00:43:04 | 沖縄

あまりにも危険な複合機オスプレイの配備が、沖縄・普天間基地に強行されそうになっている。開発段階から何度も墜落し、沖縄の2紙の一面に「オスプレイが沖縄全域を飛行」と報じられた翌日にも、フロリダで墜落している有様だ。

『オスプレイ普天間配備の危険性』(リムピース+非核市民宣言運動・ヨコスカ編、2012年)という小冊子が、オスプレイの危険性を取りまとめている。

周知のように、オスプレイは、離着陸時にはヘリモード、そして大型の回転翼を90度回転させ、水平飛行には飛行モードとなる。問題は、飛行中に何かがあった場合である。

○通常のヘリは、エンジンが止まっても、プロペラが落下するスピードを緩和する(オートローテーション)。しかし、オスプレイは重いうえに、プロペラが通常のヘリよりも小さいため、オートローテーションが効かない。つまり凄い勢いで落ちる(同じ条件で、CH46の2倍程度の速度)。
○日米政府の説明では、エンジントラブルがあっても、オートローテーションを効かせながら滑降し、滑走路に降りることができると説明しているが、これはウソ。滑走ではなくまっさかさまに落ちる。
○仮に、グライダーのように降りるとしても、回転翼を横倒しにしたままではプロペラが滑走路にぶつかるため、最後にプロペラを吹き飛ばす機能がついている。これが生活地域に落ちたら大変なことになる。
○安全に着陸できるとする前提は、普天間の周囲の「場周経路」(俵型の飛行ルートで訓練)をオスプレイが飛ぶということである。仮に、それが守られている場合に着陸できるとしても、実際の飛行ルートは、「場周経路」を大きくはみ出している。すなわち、前提から崩れている。


伊波洋一氏の説明資料(2012/6/15)

○辺野古のアセスでは、オスプレイの飛行経路が海側に示されていた(これとても、そのような台形のルートを飛べるわけがないと米軍自らが否定している)。しかし、「場周経路」は示されていなかった。すなわち、辺野古基地が仮に出来たとしたら、陸側の集落は危険にさらされる。もとより、このことが評価されていないアセスはダメである。
○オスプレイは、米国において、連邦航空局の耐空性要求を満たしていない(軍用機には適用されない)。日本の航空法においても、耐空証明が取れず、民間輸送機としては飛行できない。しかし、日米地位協定航空特例法で、米軍は、航空法の「耐空証明を受けた航空機以外の用途禁止」という条項の適用を除外されている。
○さらに、米国では、普天間のように住宅地の上を飛び続けることはない(フロリダのオスプレイ墜落事故も、基地内だから被害が最低限で済んだ)。
○従って、本来は安全基準をクリアしないような欠陥品が、しかも米国と違って、民家の上を飛ぶということになる。
○なお、普天間へのオスプレイ配備後には、キャンプ富士岩国基地に、月2,3回、2-6機が低空飛行ルートで派遣される(東京新聞、2012/6/21)。危険は「本土」にも及ぶ。


「東京新聞」2012/6/21

いくら米国に通告されるがままに安全だと言ったところで、このような代物である。

●参照
6.15沖縄意見広告運動報告集会
オスプレイの模型
60年目の「沖縄デー」に植民地支配と日米安保を問う
辺野古の似非アセスにおいて評価書強行提出
前泊博盛『沖縄と米軍基地』
屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
○シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(1)(2)(3)(4)(5)(6
『世界』の「普天間移設問題の真実」特集
大田昌秀『こんな沖縄に誰がした 普天間移設問題―最善・最短の解決策』
二度目の辺野古
2010年8月、高江
高江・辺野古訪問記(2) 辺野古、ジュゴンの見える丘
高江・辺野古訪問記(1) 高江
沖縄・高江へのヘリパッド建設反対!緊急集会
ヘリパッドいらない東京集会
今こそ沖縄の基地強化をとめよう!11・28集会(1)
今こそ沖縄の基地強化をとめよう!11・28集会(2)
「やんばるの森を守ろう!米軍ヘリパッド建設を止めよう!!」集会(5年前、すでにオスプレイは大問題として認識されている)