大島保克の新作『島渡る』(2012年)が出ている。一応はファンのつもりではあるものの、ジャズピアニスト、ジェフリー・キーザーと共演した前作をどうにも聴く気になれなかったこともあって、買うのは『島めぐり』(2005年)以来だ。
そんなわけで期待とともに発売早々に確保したのだが、一聴、何だか今までと同じだなあという印象を持ってしまい、1ヶ月以上放置していた。銀座わしたショップでのミニライヴを聴きに行こうと丁寧に再聴したところ、端々に新鮮なサウンドが隠れている。前作では企画が前面に出過ぎていたこともあって、また戻ってきたということなのだろうか。長く聴くには大歓迎である。
冒頭の「川」は、大島保克が内里美香に捧げた曲であり、『風のションカネー』(2004年)に収録されている。内里美香のしっとりとして芯のある声が好きなのだが、本人による歌唱も良い。「来夏世」は、鳩間可奈子のために書き下ろした新曲だといい、雲の間からまっすぐに降りてきたような鳩間の唄に感じ入ってしまう(もっと唄えばいいのに)。「流星」は、嘉手苅林昌に捧げた曲であり、『島時間』(2002年)で唄われているのだが、ここでのエレキギターとのデュオが新鮮。代表曲「イラヨイ月夜浜」はオーソドックスな演奏、いつ聴いても気持ちが良い。
銀座わしたショップでのライヴ(2012/6/2)では、近藤研二(ギター、パーカッション)とのデュオで、「川」、「来夏世」、「波照間」、「マンタラ祝」、「流星」なんかを唄った。CDではビブラートが少し弱弱しく聴こえたりもしたのだが、やはりライヴではそんなことはなかった。7年前の同じ場所で、大学卒業直後の鳩間可奈子とのライヴも観ているが、そのときと良い意味で変っていないのだなと思った。
それから、twitter仲間のcaruaru44さんと初めて直接話をすることができたのは嬉しかった。
「川」を唄っている、内里美香『風のションカネー』(2004年)
●参照
○大島保克+オルケスタ・ボレ『今どぅ別り』 移民、棄民、基地
○諏訪敦彦+イポリット・ジラルド『ユキとニナ』(UA+大島保克「てぃんさぐぬ花」)
○高田渡『獏』(大島保克参加)
○男鹿和雄展、『第二楽章 沖縄から「ウミガメと少年」』(大島保克参加)
○鳩間可奈子の新譜『太陽ぬ子 てぃだぬふぁー』
○鳩間可奈子+吉田康子
○知名定男芸能生活50周年のコンサート(鳩間可奈子参加)