セシル・テイラーによる1950年代後半から60年代初頭までの作品群が、『Seven Classic Albums』(Real Gone Jazz)という4枚組CDとしてまとめられている。7枚分のアルバムが収録されて12ドルとは強烈に安い。
聴いたことがあるものもそうでないものもあるが、こうして順番に聴くことができることは嬉しい。
『Jazz Advance』(1956年)
Cecil Taylor (p)
Buell Neidlinger (b)
Denis Charles (ds)
Steve Lacy (ss)
『At Newport』(1958年)
Cecil Taylor (p)
Steve Lacy (ss)
Buell Neidlinger (b)
Denis Charles (ds)
『Looking Ahead』(1959年)
Cecil Taylor (p)
Buell Neidlinger (b)
Denis Charles (ds)
Earl Griffith (vib)
『Stereo Drive (Hard Driving Jazz)』(1959年)
Cecil Taylor (p)
Kenny Dorham (tp)
John Coltrane (ts)
Chuck Israels (b)
Louis Hayes (ds)
『Love for Sale』(1959年)
Cecil Taylor (p)
Buell Neidlinger (b)
Denis Charles (ds)
Bill Barron (ts)
Ted Curson (tp)
『The World of Cecil Taylor』(1960年)
Cecil Taylor (p)
Buell Neidlinger (b)
Denis Charles (ds)
Archie Shepp (ts)
『New York City R&B (With Buell Neidlinger)』(1961年)
Cecil Taylor (p)
Buell Neidlinger (b)
Archie Shepp (ts)
Clark Terry (tp)
Steve Lacy (ss)
Roswell Rudd (tb)
Charles Davies (bs)
Denis Charles (ds)
Billy Higgins (ds)
Bonus Tracks
Gil Evans『Into the Hot』(1962年)
Cecil Taylor (p)
Jimmy Lyons (as)
Archie Shepp (ts)
Henry Grimes (b)
Sunny Murray (ds)
Ted Curson (tp)
Roswell Rudd (tb)
『Jazz Advance』(1956年)、『At Newport』(1958年)、『Looking Ahead』(1959年)、『Love for Sale』(1959年)の50年代後半の作品群は、同じメンバーでのピアノトリオに、曲によって管やヴァイブが参加する編成である。あらためて意外に思えることは、以前は随分過激に感じたテイラーのピアノが、まだまだモダンジャズのバウンダリー内にあったということだ。しかし、スティーヴ・レイシーは、既にその音色や節回しにおいて自分の個性を確立しているように感じる。
その流れのなかにあって、『Stereo Drive (Hard Driving Jazz)』(1959年)だけは異色のメンバー構成(ヴァージョンによってアルバムのタイトルが異なった)。何しろ、ジョン・コルトレーンとケニー・ドーハムをフロントに据えている。これが面白いかというとそうでもない。個人的にコルトレーンのサックスが好きでないこともあるが、まだテイラー前史であり、異種格闘技のような緊張感は生まれていないのである。
ところが、『The World of Cecil Taylor』(1960年)になると、明らかに潮目が変わる。見掛け上は、単に、若きアーチー・シェップが参加するだけのことである。シェップの野獣性のようなものが、化学反応を起こしたのだろうか。テイラーのピアノは、独自の繰り返しと発散を行う。
『New York City R&B (With Buell Neidlinger)』(1961年)は、大編成であること以上に何ということもないセッションだが、もはや、こちらの耳は、テイラーと、シェップと、レイシーを聴きだすことに悦びを覚えている。「昔はよかったね」の演奏がミスマッチで笑える。
そして、ギル・エヴァンスがアルバム半分だけ名義貸しをした『Into the Hot』(1962年)では、シェップに加え、ジミー・ライオンズが参加する。そうか、後年の傑作群におけるテイラー音楽のにおいは、ジミー・ライオンズのアルトサックスによるものでもあったのか。
●参照
○ドミニク・デュヴァル+セシル・テイラー『The Last Dance』(2003年)
○セシル・テイラー『The Tree of Life』(1991年)
○セシル・テイラー『In Florescence』(1989年)
○1988年、ベルリンのセシル・テイラー
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(1979-86年)
○イマジン・ザ・サウンド(セシル・テイラーの映像)(1981年)
○セシル・テイラー『Dark to Themselves』(1976年)、『Aの第2幕』(1969年)