アンドルー・ショーン・グリア『The Impossible Lives of Greta Wells』(2013年)を読む。「グレタ・ウェルズのありえない人生」といったところか。
1985年、ニューヨーク、マンハッタン。主人公グレタは、双子の兄フェリックスを亡くし、また恋人のネイサンも去ってしまい、絶望のどん底にいる。精神科医に勧められて電気ショック療法を試したところ、異変が起きる。朝目覚めてみると、1918年、1941年、そして元の1985年のどこかの時点にタイムスリップしてしまっていた。単なる時間移動ではなく、それぞれの世界では、状況が微妙に異なっていた。ネイサンと結婚していたり、若い恋人とつきあっていたり、フェリックスが同性愛の咎で逮捕されていたり。しかも、自分がいない間に、別時点のグレタがやってきて、異なるアイデンティティのもと行動しているようなのだった。
気分転換のために読んだエンタテインメントではあるが、実はかなりひどい。物語には大した工夫がなく、表現はステレオタイプで、しつこく、ベタベタに甘い。
後半になるともう半ばイヤになってきて、さすがにそろそろ驚かすような展開があるだろうと念じて読み続けたが、最後までそれはなかった。しかも、最後にまとめるように、グレタの下らぬ独白。いい加減にしてほしい。アホくさ~。
この作家の小説など、二度と読まない。