坪井潤一『空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方 ―被害の真相とその解決策を探る―』(成山堂書店、2013年)を読む。
旧江戸川で毎朝姿を見るカワウ。凝視していると、杭の上から滑空し、両足を揃えて着水、そして唐突にちゃぽんと潜る。魚を獲っているのである。本書によると、カワウが魚を発見する能力は大変なものがあるようで、どんなに透明度が低くても着実に捕える。
そのために、カワウは、漁民から時に害鳥扱いされる。せっかく放流したアユを食べられてしまっては、怒るのも当然である。しかし、著者によれば、その見方は極端にすぎる。むしろ、カワウの存在は「川の豊かさのバロメーター」なのであり、魚や人と共存すべき存在なのだという。逆に、埋め立てや河川改修といった水環境の悪化、汚染物質の蓄積などにより、1970年代には、絶滅寸前の存在であった。
また、水産被害といっても、単にオカネに換算した数字だけを見るべきではないとする。なぜなら、たとえば直接田畑を荒らす動物とは異なり、カワウは、人間と共有する魚類資源を食べる。共存であれば、カワウが食べた魚のオカネ換算は被害額とはいえない。
そのようなわけで、著者が強調するテーマは、「如何にカワウと共存するか」。銃で撃ったり、何かで脅したり、他の魚を放流してそれを食べさせたり。なお、対策のひとつとして試行された「カワウ食い」は、大失敗に終わっている。「信じられないくらいまずい」そうだ(笑)。
興味深いことに、カワウの糞を集めて肥料やリン資源としてリサイクルするアイデアが書かれている。リン資源はともかく、糞の利用は戦前への回帰であり、効率的に集めて取り出すという方法は面白い。何しろ、森を枯死させるほどの強烈な代物である。
仕事は、このくらい楽しみながら展開していかなければならない。
映像
>> 川本博康『東京のカワウ 不忍池のコロニー』(科学映像館)
>> 「カワウの大群(舞阪港にて)」 (本書で紹介)
2010年12月、旧江戸川
●参照
○川本博康『東京のカワウ 不忍池のコロニー』(科学映像館の無料配信映画)
○旧江戸川のゆりかもめ、カワウ(2010年12月)
○旧江戸川のカワウ(2010年12月)
○旧江戸川のゆりかもめ、カワウ、ドバト(2010年2月)