Sightsong

自縄自縛日記

ヴィム・ヴェンダース『ミリオンダラー・ホテル』

2014-09-20 13:06:07 | 北米

ヴィム・ヴェンダース『ミリオンダラー・ホテル』(2000年)を観る。

ロスの古いホテルに棲む、変人たち。この中に、富豪の息子も入り込み、ある日、屋上から身を投げた。富豪に捜査を依頼されたFBIの捜査官(メル・ギブソン)、死んだ男の親友(ジェレミー・デイヴィス)、孤独な女の子(ミラ・ジョヴォヴィッチ)たちが登場し、一期一会の選択をしていく。

これは現代のクズたちの物語である。もちろん、誰もが例外なくクズであるという意味で。登場人物たちの後戻りできない切迫感に、こちらもとらわれてしまう。

ちょうど、『エンド・オブ・バイオレンス』(1997年)や『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999年)に失望させられた直後ゆえ、ヴェンダースの作品ながら敢えて無視していたのだった。この変人たちの物語を観に行くべきだった。

●参照
ヴィム・ヴェンダース『パレルモ・シューティング』
ヴィム・ヴェンダース『ランド・オブ・プレンティ』、『アメリカ、家族のいる風景』


安丸良夫+菅孝行『近代日本の国家権力と天皇制』

2014-09-20 08:59:03 | 政治

安丸良夫+菅孝行『近代日本の国家権力と天皇制』(御茶の水書房、2014年)を読む。

国家体制、あるいは、<国体>は、明治維新と太平洋戦争敗戦のふたつを不連続面として、形成され、強化された。

とくに後者から現在につながるそれは、アメリカの意向を抜きにして考えることはできない。このことは、所与のものとしてではなくあらためて直視してみれば、非常に奇妙で歪なことである。まさに、「アメリカへの隷従―――沖縄献上・基地自由使用・反共国是の維持、外交の自由の剥奪―――の対価」(6頁)として、与えられたものであった。

著者ふたりの対談からは、アメリカ云々は置いておいても、さらに、この権力構造のあり方が、実に巧妙かつ効果的なものであったことが実感できる。武家政権(軍事政権)下での民衆の<みかど>幻想は、明治国家において手段・制度として横領され、天皇制・国家神道として、後付けであらゆる宗教のうえに置かれることとなった。すなわち、国家神道は無宗教に他ならなかった。権力による民間信仰の横領があったからこそ、実は不連続(近代のつくりもの)であるにもかかわらず、連続であるかのような幻想とともに、支配のかたちが民衆の無意識に浸透した。

たとえば、「大本」を創始した出口なおの強烈な思想は、そのような権力形成への抵抗であったとされる。なるほど、後年に、出口王仁三郎が「皇道」を説いたからといって、それは近代の偽装とは根本的に異なるものであったからこそ、弾圧されたわけである。

こういったプロセスが、現代日本の「無責任のシステム」を創りだした原因のひとつであったとする論考には、納得できる点が少なくない。

●参照
多木浩二『天皇の肖像』
出口京太郎『巨人 出口王仁三郎』、早瀬圭一『大本襲撃』
『大本教 民衆は何を求めたのか』
豊下楢彦『昭和天皇・マッカーサー会見』
「かのように」と反骨