Sightsong

自縄自縛日記

ハル・ハートリー『ブック・オブ・ライフ』

2014-09-14 22:21:49 | 北米

ハル・ハートリー『ブック・オブ・ライフ』(1998年)を観る。

20世紀末における『黙示録』の物語である。

イエスとマグダラのマリアが、ニューヨークに現われる。イエスのパソコンの中には、「The Book of Life」が入っており、7つの封印のうち4つまでが解かれている。5つ目の封印をほどくと、『黙示録』通り、殉教者の魂が現われる。イエスは、人を裁けと訴える殉教者に対しても、サタンに対しても、また他の関係者に対しても、さらに封印をほどくことを拒否する。それは、人間世界を滅ぼすことへの、かれの迷いによるものだった。

映像はデジタルヴィデオで撮られており、今観ると、iphoneの画像よりも低画質であり、それがまた新鮮(無理に言えば)。まあ、しょうもない物語ではあるのだが、イングマール・ベルイマン『第七の封印』の厳かさが冗談としか思えないことを考えると、このスピード感のあるポップな現代劇のほうが余程マシなのだった。

そんなわけで、映画に刺激されて思い出し、岡田温司『黙示録』(岩波新書)を読み始めた。このような直接的な映画だけでなく、『黙示録』が与えた影響は非常に広範囲に及んでいそうだ。

●参照
ハル・ハートリー『シンプルメン』、『はなしかわって』


奈賀悟『閉山 三井三池炭坑1889-1997』

2014-09-14 10:29:39 | 九州

奈賀悟『閉山 三井三池炭坑1889-1997』(岩波書店、1997年)を読む。

三井三池鉱山は、福岡県大牟田市を中心とした坑道の入り口から有明海の海底にまで広がる、巨大な炭鉱であった。その総延長は300kmとも言われたという。官営三池炭鉱が三井に払い下げられたのが1889年(大日本帝国憲法の公布年)、そこから明治、大正、昭和と、日本の経済発展に貢献した。歴史的役割を終え、本書が刊行された1997年に閉山。いまでは、坑道掘りの炭鉱は、日本国内では釧路にしか存在しない。

などと書くと、産業発展史の教科書のようになる。実際には、それは、無数の炭鉱労働者に対する暴力的な抑圧によって維持されていた。(なお、北九州の炭鉱は多数の小規模な炭坑の集合体、三井三池はより大規模なものだと思っていたが、本書によれば、三井三池でも、入口単位での管理をしていたようだ。)

炭坑労働者の間でも激しい差別的な扱いがあった。よく知られたことだが、当初は囚人使役があり(払い下げには、囚人使用権まで含まれていた)、やがて、中国や朝鮮から労働者を連れてきた(強制的に、あるいは、二年間などと騙して)。中国人労働者・朝鮮人労働者に対する扱いは熾烈を極めた。言うことをきかないと直接殺すこともあり、また、「使えなく」なってから、亡くなってからは、ひとりひとりとしては扱われなかった。

外国人だけではない。飢餓や貧困に苦しんでいた与論島からは多くの労働者が渡ってきて、港湾で働いた。かれらも差別の対象となった。(このあたりは、熊谷博子『三池 終わらない炭鉱の物語』熊谷博子『むかし原発いま炭鉱』に詳しい。)

戦後、会社はさらに効率化を進めた。つまり、労働条件の過酷化を進め、安全対策を適切に行わなかった。その結果として起きた事故が、1963年の炭塵爆発である。炭塵が放置され、あるきっかけで火が付き、爆発・落盤するとともに、発生したCOガスで、多くの労働者が亡くなり、また、激しい後遺症に苦しむこととなった。

しかし、このように因果関係が明らか過ぎるほど明らかな事故に対しても、会社や国の対応はあまりにも不適切だった。その過程では、原因を炭塵ではないとする「学者」や、誤った判断をくだす「医者」や、条件闘争のなかで個人を押しつぶそうとする「労組」や、経済発展を最優先させる「国」が、犠牲者に立ちはだかった。こう見ると、歴史は現在につながっているのだということがよくわかる。

●参照
熊谷博子『むかし原発いま炭鉱』
熊谷博子『三池 終わらない炭鉱の物語』
上野英信『追われゆく坑夫たち』
山本作兵衛の映像 工藤敏樹『ある人生/ぼた山よ・・・』、『新日曜美術館/よみがえる地底の記憶』
勅使河原宏『おとし穴』(北九州の炭鉱)
友田義行『戦後前衛映画と文学 安部公房×勅使河原宏』
本多猪四郎『空の大怪獣ラドン』(九州の仮想的な炭鉱)
佐藤仁『「持たざる国」の資源論』
外村大『朝鮮人強制連行』
原田正純『豊かさと棄民たち―水俣学事始め』
石井寛治『日本の産業革命』


旨いサウジアラビア

2014-09-14 00:41:12 | 中東・アフリカ

4回目のサウジアラビア。今回も、いちどだけ、カプサという羊肉の炊き込みご飯を食べたものの(しかも、羊の頭が骨ごと入っている)、大勢の仕事相手と一緒であり、頭がいっぱいで、あまり食に気が回らない。

そんなわけで、他の中東料理といえば、シリア料理、レバノン料理、ショッピングモールのフードコート。どれがどのように違うのか、よくわからない。旨いのではあるが、やはり、ビールが欲しい。言うまでもないことだが、アルコールはご法度である。

■ 蜂蜜

箱から取ってきたばかりの蜂蜜。何を隠そうこれが好物で、つい、沢山。

■ ABOU KAMAL(シリア料理)

安いシリア料理の店。と言っても物価はそれなりに高い。

チキンやケバブをクレープ状のパンと一緒に食べるメニューがいろいろあり、なかなか旨い。しかし、人参ジュースは昔のくさい人参そのものの味だった。

刻んだ野菜を食べていると、中に、カメムシのような虫が紛れていた。これも真っ当な野菜を使っている証拠だ、と、自分に言い聞かせた。

■ スターバックス

一番小さいコーヒーが300円程度であるから、味も値段も日本と同じ。Wifiも使える。東京でもニューヨークでもジャカルタでもバンコクでも、スタバがあると妙に安心してしまう。コンビニと同様に、同じ規格だからか。

ところで、冗談のように大きいクロワッサンを売っていた。動かず高カロリーなものを食べ、立派な体格になっていく国であることは間違いない。

■ フードコート

とあるショッピングモールの一角にあるフードコート。現地料理も、マクドナルドも、アンティ・アンズも、サブウェイも、サムライとか鎧とか妙な名前が書いてある日本料理もある。

取り敢えず欲しいものを指さして弁当箱に入れてもらうものにした。想像以上に旨かった。

■ KARAM(レバノン料理)

入ろうと思ったらアザンが鳴り響いた。こうなると店が閉じてしまって入店もできない。15分くらい待って、ようやく、ノンアルコール・ビールで乾杯。肉料理はさすがに旨い。ホモスというひよこ豆のペーストが名物のようだった。

■ チーズとかペーストとか

チーズの多くは山羊や羊の乳から作られていて、これが例外なくしょっぱいのは何故だろう。

ペーストにもいろいろあって、上のホモスの他にも、パンに合う甘いタイプは悪くない。

■ 東京レストラン(日本料理)

4時間をかけてダンマンに移動し、疲れていたこともあって、日本料理。

カツ丼を頼んでみると(豚肉を使えないため牛肉)、それなりに旨くはあって嬉しくなる。しかし、ご飯がパサパサで、残ってしまった。エジプトかイタリアのコメを使っているという話だが、コメの質が日本料理に向いていないのか、炊き方がよくないのかはわからない。

海外カツ丼勝負をするなら、ミャンマーの勝ち(2箇所しか食べていないが)。