クリス・ピッツィオコス(Chris Pitsiokos)というアルトサックス奏者が、日本でも話題になりはじめている。わたしもTwitter経由でかれの存在を知り、そのプレイをyoutubeで何本か観たのみだ。なお、名前の呼び方だが、Downtown Music Galleryのブルース氏によれば、「まずPit!だ、そのあとにSiokos」。ピット、シオコス、つまりピッツィオコス。(かれもDMGで働いている)
まずはブルックリンのShapeshifter Labに足を運ぶ(2015/3/31)。「Lester St. Lewis Large Ensemble」というグループにおいてピッツィオコスも吹くのだという。ちょうどすぐにわかる長身のピッツィオコスがいて準備中だった。
このアンサンブルは、チェロ、ヴァイオリン、ギター、フレンチホルン、チューバ、アルトサックス、フルート、手製のヘンな楽器の8人編成。全員20-30代だろうか。定められたアンサンブルというよりも、ルーズに順番と役割を決めて行う即興のようだった。それぞれの実験精神が実に愉しい演奏だったのだが、その中でも、ピッツィオコスの演奏は異質な強度を持っていた。
音量がひたすら大きいというわけではない。鳥のささやきのようでもあり、自身の内臓をすべて吐き出すようでもあり。はじめてナマで聴き、こちらの身体まで裏側にひっくり返ってしまいそうな感覚を味わった。マウスピースのくわえ方も独特で、ときに鼻の下を伸ばしたりして吹いていた。
終わってからあれこれと話をした。サックスはほぼ独学であるという(!)。とはいえ影響を受けたプレイヤーについては、思案して、アンソニー・ブラクストンとかジョン・ゾーンとか、といった答え。いや全然スタイルも違うし、自分はエヴァン・パーカーも思い出したけどと振ってみると、まあね、好きだけどね、と。



このあとにスティーヴ・リーマンの演奏があって、その前に、次の演奏場所への行き方を教えて先に立ち去った。やはりブルックリンにあるDon Pedroというバーで、ここから電車で1本。
着いてみるとピッツィオコスがもう準備していた。待つ間に話したところによれば、高校時代にジャズ・バンドのツアーで東京、京都、広島に行ったことがあるという。日本のプレイヤーで思い出すのは、吉田達也、灰野敬二、坂田明、メルツバウ、吉田野乃子。何でも最近ディスクユニオンにCDとレコードを取り次いだそうなので、日本で出回るのも時間の問題である。
先に3グループの演奏があって、23時半ころから、ピッツィオコスとグレッグ・フォックスとのデュオが始まった。アンサンブルでは出番も限られていたのだが、ここではずっと吹きまくり。体を前後に揺らして、さっき聴いた音よりもさらに振幅も強度も大きな音を発し続ける。バーで飲んでいた客もみんな出てきて、圧倒されて観ていた。
まだ24歳だという。



Chris Pitsiokos (as)
Greg Fox (ds)
以下、前に演奏していたグループ。

Needle Driver

Lucas Brode, Alex Cohen, John Budrow, Sam Hopkinsのグループ