Sightsong

自縄自縛日記

石川直樹+奈良美智『ここより北へ』@ワタリウム

2015-04-19 23:14:55 | 北海道

久しぶりにワタリウムに足を運び、石川直樹(写真)と奈良美智(絵、写真)とのコラボレーションによる展示『ここより北へ』を観る。

きっかけは、北海道と東北とにいくつもの同じ地名があったことだという。かつてアイヌは、和人との交易をなし、また東北に移ってきたこともあった。そこから、さらにサハリンへと向かうふたりの旅がはじまっている。

サハリンもアイヌの活動・生活範囲であった。日本統治の時代があり、敗戦によりソ連=ロシアの支配に移り、それでも地名も文化も風土も残る。残留コリアンの血をひくのではないかと思われる人の写真もあった。

現在でも、普通にサハリンを旅することはそんなに簡単でもないようだ。そのことと、日本統治時代の廃墟(王子製紙の工場)、山や原野の風景があいまって、猛烈な旅情を掻き立てる。いつか必ず行こう。

奈良さんの蔵書の展示がまた楽しい。エドワード・サイード、宮本常一、ミシェル・レリス、エリック・ホッファー、山口昌男、なぜか根本敬、アントン・チェーホフ、南方熊楠、数多くのアイヌ関係の書物。あれれ、師匠筋のA.R.ペンクの画集がない。

●参照
瀬川拓郎『アイヌ学入門』
姫田光義編『北・東北アジア地域交流史』
井上勝生『明治日本の植民地支配』(アジア侵略に先だってなされたアイヌ民族の支配)
伊佐眞一『伊波普猷批判序説』(伊波はアイヌをネーションを持たぬとして低く評価した)
OKI meets 大城美佐子『北と南』(OKIはアイヌの弦楽器トンコリの使い手)


アンドリュー・ディアンジェロ『Norman』

2015-04-19 09:40:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ディアンジェロ『Norman』(AD、2014年)を聴く。

Andrew D'Angelo (as, bcl)
Jim Black (ds)
Trevor Dunn (b)

LPレコード限定である。ディアンジェロがインストアライヴを行ったDowntown Music Galleryで、その数日後に入手した。

ライヴのとき、ディアンジェロはこんなふうに言った。

「最近久しぶりにヴァイナル(Vinyl)を出したんだよ。いやヴァイナルって、LPとかレコードとか言えばいいんだけど。回転もいろいろあるだろ、33とか45とか、あと何だっけ」
(客)「78」
「そうそう。回転数を間違えてかける奴とかいるよな」

ついでに、手持ちの『Morthana with Pride』にサインをいただいたところ、渡した黒ペンを見て、「黒ペンか。俺はいつも金のペンでサインをしてるんだけどな」(笑)と。実際に、LPの番号には「171」と金ペンで書いてある(432枚というヘンな枚数の限定プレスなのだ)。

タイトルの「Norman」はディアンジェロのミドルネームであり、この曲だけ、テナーサックスのビル・マッケンリーがディアンジェロに捧げている。それというのも、ディアンジェロが一時期脳腫瘍で入院していたからであり、ここでの演奏も、かれの兄弟が書いた解説によれば、病気の影響でかつてほど苛烈なものではないという。確かに『Morthana with Pride』に比べればそうかもしれない。しかし、ここで聴こえる音は、真っ赤になって息の圧でサックスをびりびり震わせ、ときに肉声を混ぜるディアンジェロのものだ。

かつての「Gay Disco」にかけた「Gay Crisco」は変拍子を愉しみまくっている(もちろん、こちらも愉快)。アルトのみならず、特に「Intro Vota Ju」におけるバスクラ・ソロなど素晴らしくよれていく。そして、音割れのするシンバルとタイコなどガジェットとともにともかくも駆けるジム・ブラックも良い。

●参照
アンドリュー・ディアンジェロ@Downtown Music Gallery
アンドリュー・ディアンジェロ『Morthana with Pride』
エド・シュラー『The Force』


ブロッツ&サブ@新宿ピットイン

2015-04-19 00:37:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

ペーター・ブロッツマンが今年も来日し、豊住芳三郎と組んでツアーを行っている。今回、近藤等則がゲストの日に新宿ピットインに足を運んだ(2015/4/18)。

Peter Brotzmann (sax, cl)
豊住芳三郎 (ds)
近藤等則 (el-tp)

ブロッツマンのエネルギーは相変わらずだ。ブギャーブギョーと、おのれのブルースをひたすら吹く。ときに折り畳みナイフを取り出し、マウスピースに装着したままのリードを削ったりしている。豪快というべきなのか。確か、かれが東京の楽器店にサックスを持ち込んで点検してもらったところ、こんなボロボロで吹ける人がいるということが信じられないという反応があった、との話。

相変わらずといえば、近藤等則のトランペットもそうである。さまざまな工夫やギミックを見せつつも、意識は、広い広い向こう側にトランペットを響かせることにあるように思える。

そして豊住芳三郎。まるで空翔るハヌマーンのようなポーズで、すべてのものをビシバシと叩き、フラグメンツと化さんとする。わたしは多分15年ぶりくらいに演奏を観るような気がするが、これほどにパワープレイの人だったか。何しろ、途中でスティックが折れて客席に飛んできたのだ。豊住さんのもっとも印象に残っている演奏は、世田谷美術館においてミシャ・メンゲルベルグと繰り広げたデュオだが、それも、ここまで強靭なものであったら、もっと凄いものになったに違いない。

●参照
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
『BROTZM/FMPのレコードジャケット 1969-1989』
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(ブロッツマン参加)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(ブロッツマン参加)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』
ペーター・ブロッツマン
セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(ブロッツマン参加)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(ブロッツマン参加)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』
トリスタン・ホンジンガー『From the Broken World』、『Sketches of Probability』(近藤等則参加)
本田珠也SESSION@新宿ピットイン(近藤等則参加)(2014年)
浅川マキ『幻の男たち』 1984年の映像(近藤等則参加)