Sightsong

自縄自縛日記

アンドリュー・ドルーリー+ラウブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art

2015-04-02 23:10:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

The StoneからArts for Artまで歩いて5分くらい。21時20分くらいに着くと、ちょうど演奏がはじまる直前だった。

Andrew Drury (ds)
Ingrid Laubrock (ts)
Briggan Krauss (as)
Brandon Seabrook (g)

Arts for Artは音楽やダンスなどの活動を紹介するNPOで、学校のようなところの2階のひと部屋にあった。特に表示も出ていないため、訊いてまわらないと絶対にたどり着けない。

その一室はまさに教室のようで、ギターを除きアンプなしの演奏。ドルーリーはすごく響きが良い、室内がドラムスのようだとコメントしていた。さて、はじめて聴くドルーリーのドラムスは、シンプルに、精力的に叩くタイコのスタイル。途中で、器具に息を吹き込みタイコから音を出すパフォーマンスも行った。

部屋全体で共鳴するのはサックスも同様。ブリガン・クラウスのスピーディーなアルトと、イングリッド・ラウブロックの深みのあるテナーとが音叉のようにうなりを生じさせ、それがさらに空間に響いていた。

ギターのブランドン・シーブルックをよく見ると、昨晩Don Pedroで頭を振りまくっていた人ではないか。終わってから、「Needle Pointでしょう」「なにそれ?」「いや、昨日Don Pedroで」「Needle Driverだよ!」。グループ名を思い切り間違えているのにもかかわらず、本人のソロCDをいただいてしまった。

※この日はもともとチャールズ・ゲイルが客演する予定だったがキャンセル。ドルーリー氏もがっかりしていた。

●参照
ブリガン・クラウス『Good Kitty』、『Descending to End』
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』
トム・レイニー『Obbligato』(ラウブロック参加)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(ラウブロック参加)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(ラウブロック参加)


マリリン・クリスペル+ルーカス・リゲティ+ミシェル・マカースキー@The Stone

2015-04-02 15:46:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

この人もレジェンド、マリリン・クリスペル。

The Stoneでは、ルーカス・リゲティの5日間連続ライヴ中である。そのうち1ステージだけが、クリスペルとの共演に当てられた。なお、リゲティはあの現代音楽の作曲家リゲティの息子であるらしい。

Michelle Makarski (vl)
Marilyn Crispell (p)
Lukas Ligeti (ds)

クリスペルは、終始、穏やかな微笑みを保っている。キース・ジャレットとの共演歴もあるミシェル・マカースキーがヴァイオリンで擦音を発しはじめると、クリスペルも散発的な音を発する。リゲティのドラミングは、激情に走らず、音叉によるタイコの振動も使ったりして、多彩な効果を出すものだった。

ときに演奏は静かな局面を迎え、聴く者が殺されてしまうのではないかと妄想してしまうほどの緊張感と静寂が創出される。ドラムスの音、ヴァイオリンの音、そして自らの分散型のピアノの音が発せられた後に、それらの「過去の音」がすべて幻であったかのように、哀切極まりない旋律によって異空間に送り込むクリスペル。感情の発露などだけではなく、流し、取り込み、その挙句に綺麗なものも地獄も同時に眩出させるようなピアノだった。

恐ろしい、この人は魔女か。


アネット・ピーコック集『Nothing Ever Was, Anyway』にサインをいただいた

●参照
マリリン・クリスペル+バリー・ガイ+ジェリー・ヘミングウェイ『Cascades』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』
ペーター・ブロッツマン


照屋勇賢@josee bienvenu gallery

2015-04-02 15:04:23 | 沖縄

そういえば照屋勇賢さんの作品を展示していたはずだと思い出し、チェルシーにあるギャラリーの場所を調べて行ってみた。チェルシーはギャラリー村だが、どうも「josee bienvenu gallery」が見当たらない。その辺で作品を搬出している人に訊くと、そこのビルに沢山ギャラリーが入っているよと教わった。

照屋さんは沖縄出身のアーティストであり、佐喜眞美術館や沖縄県立博物館・美術館にも作品が収蔵されている。また調べてみるとアメリカやヨーロッパの美術館にもあるようだ。

このギャラリーに展示してあった作品は、ささやかな人の手がくわえられ、大きなものにつながりそうな世界観を感じさせるものだった。「Minding My Own Business」は、新聞の悲惨な報道写真の一部が樹々となってまた自然につながってゆくようなもの。また、「It's for You, It's for Me」は、オスプレイ配備への反対運動を報じた新聞に、スペイン語、アラビア語、英語でその言葉が切り抜かれているものだった。 

ドライではないコンセプチュアルアートというべきか。おそらく樹々の姿には多くの人が共感を覚えるであろう。また、メッセージの切り抜きは、たとえばグッゲンハイム美術館で開かれている河原温の作品よりも現代的で、社会とつながっている。


「Minding My Own Business」


「It's for You, It's for Me」


メトロポリタン美術館のフェルメール、ティルマンス、キャリントン

2015-04-02 14:36:12 | ヨーロッパ

ニューヨークでは、フリック・コレクションの他に、メトロポリタン美術館でもヨハネス・フェルメールの作品を観ることができる。

せっかくの機会なので観ておこうと入ってみたが、なにしろ広すぎて話にならない。したがって、フェルメールと近現代美術に絞ることにした。「みんなのうた」に、「タイムトラベルは楽し、メトロポリタンミュージアム」なんて歌があったが、そこまで余裕を持って鑑賞できる人はいるのだろうか。

そんなわけでフェルメール。「眠る女」、「水差しを持つ女」、「リュートを調弦する女」、「少女」、「信仰の寓意」の5点が展示されていた。実際に観ての印象としては、「眠る女」以外にはさほどの神通力を感じなかった。しかし、一見可愛くないように見える「少女」であっても、肉体と空気との間が融合しているような光の描写には驚きがあった。


フェルメール「眠る女」(部分)

19世紀後半-20世紀の作品群については、ちょっと疲れていてだらだらと見流す程度。しかし、ヴォルフガング・ティルマンスが広角でないレンズを使って撮った建造物の写真群の上映は、こうして人間の営為を40分も続けてみせられると、何かを畏れる気にさせられてしまうものだった(実は結構寝た)。

また、レオノーラ・キャリントンの有名な作品に遭遇できたことも嬉しかった。英国で生まれ、メキシコで活動したシュルレアリストである。


ティルマンスの映像


キャリントンの「自画像」(部分)

●参照
フリック・コレクションのフェルメール
テート・モダンとソフィアのゲルハルト・リヒター