Nuisance Galerieにおける「FUKUSHIMAと壷井明 無主物」展。最終日(2015/7/5)は、栗原みえ『チェンマイ チェンライ ルアンパバーン』(2012年)という8ミリ映画の上映が行われた。企画した安田哲さんが8ミリ映写機にこだわっていたのだが、諸事情によりDVDプロジェクターが使用された。
映画は、栗原さんがタイのチェンマイとチェンライ、それから旅仲間のことばに心動かされてラオスのルアンパバーンに旅をするプロセスである。現地の人たちと仲良くなって、やたらクローズアップしたり遊んだり。8ミリの滲んだ映像と、揺れ動きと、栗原さんの脱力したようなナレーションがやたらと楽しい。いや~、旅はいいね。
ところが、帰国後、「3・11」を迎えて映画のトーンは一変し、緊迫感に満ちたものになる。外界を本能的に恐怖して閉じこもる栗原さんは、タイやラオスでの狂犬病などにも思いを馳せる。直視するとそれに囚われて逃れられなくなる「死」というものが、すべての共通項として浮上してくるわけである。安田さんがこの映画を最終日にもってきた理由かな。
終わった後、サンポーニャ奏者の青木大輔さんによるソロ。最初は真っ暗ななかで、そのあと、足元に蝋燭の火をいくつか灯して。暗闇と息遣いは8ミリ映画にも共通するものである。
●参照
「FUKUSHIMAと壷井明 無主物」@Nuisance Galerie(2015/6/6、丸木美術館・岡村幸宣さんとの対談)
「FUKUSHIMAと壷井明 無主物」@Nuisance Galerie その2(2015/6/13、浄土真宗本願寺派僧侶・大來尚順さんとの対談)
岡村幸宣『非核芸術案内』