Sightsong

自縄自縛日記

ペーター・ブロッツマン+フレッド・ホプキンス+ラシッド・アリ『Songlines』

2016-04-02 09:38:24 | アヴァンギャルド・ジャズ

ペーター・ブロッツマン+フレッド・ホプキンス+ラシッド・アリ『Songlines』(FMP、1991年)を聴く。

Peter Brotzmann (tarogato, as, ts)
Fred Hopkins (b)
Rashid Ali (ds)

ラシッド・アリのドラムス、フレッド・ホプキンスのベースに続いて、おもむろにペーター・ブロッツマンが入ってくる。「ヌウェー」というか、「ンヲー」というか、濁った音のビブラートの奔流なのである。ときには「ブギョー」という叫び。いつも同じなのではあるが、濁りと歪みとを吐き出した途端に、ブロッツマンだけが展開できるブルースとなる。

ここで組んだメンバーはみんな向いている先が異なるようで、それがまたいい。この三者が絡むことの快感といったらない。どの楽器に耳を貼り付けても、他の二者が別のあり様で近づいてくる。

ホプキンスのベースは中音域で上品に倍音を聴かせてくれる。デイヴィッド・マレイとともに来日したとき、わたしはひどい風邪で駆けつけられず、その後亡くなった。

また、アリのドラムスは、ジョン・コルトレーンの最後のグループでも、アリス・コルトレーンのグループでも、「Prima Materia」などでも、もちろんここでも、うねりのたくりながら、爆竹を鳴らしながら、昇竜のように天に向かい続ける。この人も、実際のプレイを観ることができず、数年前に鬼籍に入ってしまった。

●参照
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
『BROTZM/FMPのレコードジャケット 1969-1989』
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(ブロッツマン参加)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(ブロッツマン参加)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』
ペーター・ブロッツマン
セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(ブロッツマン参加)
マッコイ・タイナーのサックス・カルテット(デイヴィッド・マレイ『Special Quartet』、1990年)(ホプキンス参加)
デイヴィッド・マレイの映像『Live at the Village Vanguard』(1986年)(ホプキンス参加)
ヘンリー・スレッギル(9) 1978年のエアー(ホプキンス参加)
ヘンリー・スレッギル(7) ズォイドの新作と、X-75(ホプキンス参加)
”カラパルーシャ”・モーリス・マッキンタイアー『Forces and Feelings』(1970年)(ホプキンス参加)
ラシッド・アリ+ペーター・コヴァルト+アシフ・ツアハー『Deals, Ideas & Ideals』(2000年)
プリマ・マテリア『Peace on Earth』、ルイ・ベロジナス『Tiresias』(1994、2008年)(アリ参加)
ジェフ・パルマー『Island Universe』(1994年)(アリ参加)
アリス・コルトレーン『Universal Consciousness』、『Lord of Lords』(1971、1972年)(アリ参加)
アリス・コルトレーン『Huntington Ashram Monastery』、『World Galaxy』(1969、1972年)(アリ参加)
ラシッド・アリとテナーサックスとのデュオ(1967、1972年)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965年、1995年)(アリ参加)


梅津和時+トム・コラ『Abandon』

2016-04-02 07:54:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

梅津和時+トム・コラ『Abandon』(Umiushi Records、1987年)を聴く。

Kazutoki Umezu 梅津和時 (as)
Tom Cora (cello)

横田庄一郎『チェロと宮沢賢治』を読んだらなんだかチェロが聴きたくなって、中古棚にあったこれを買った。

梅津和時のサックスには艶も情けもあってとても好きである。しかし今は、何しろトム・コラの素晴らしいチェロ演奏で鼓膜がひたすら共振する。ドライな音を自在に操っていて、奇妙な明るさと奇妙な哀しさが共存している魅力がある。人生はお祭りだという意味での祝祭感も、トリスタン・ホンジンガーに負けていない。とにかく、聴いている間は気持ちが浮き立ち、また、なにやら悲喜こもごもを思い出してしまうのだ。

生前にライヴを体感したかったな。


坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee

2016-04-02 00:21:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

千駄木のBar Issheeに足を運び、坂田明+今井和雄+瀬尾高志という驚くようなトリオ。

Akira Sakata 坂田明 (as, cl, voice, bell)
Kazuo Imai 今井和雄 (g)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)

今井さんのアコースティックギターは驚くほど多彩であり、知的できらびやかなラインも、両手でのタッピングも、左手を連続的に動かしながらの周波数の微妙な変化も、破裂音も、鎖や木の板を利用した音もあった。

一方、瀬尾さんのコントラバスは、絶えざるエネルギーのインプットと、重く引き締まってカラフルな音色がとても印象的なものだった。

瀬尾さんと今井さんとがサウンドを下から横から擾乱する。そして坂田さんの意外なほど美しい音のサックスとクラリネットとが、全体を駆動しつつ丸めているようでもあった。聴いていると、奇妙に覚醒してきて、まるで第三の目が開いたかのような錯覚を抱いた。

●参照
ジョー・モリス@スーパーデラックス(2015年)(坂田明参加)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)(坂田明参加)
見上げてごらん夜の星を(坂田明『ひまわり』、2006年)
浅川マキ『ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏家たちのOKをもらった』(1980年)(坂田明参加)
浅川マキ『Maki Asakawa』(主に1970年代)(坂田明参加)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年)(瀬尾高志参加)
寺田町+板橋文夫+瀬尾高志『Dum Spiro Spero』(2014年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)(瀬尾高志参加)
齋藤徹、2009年5月、東中野(瀬尾高志参加)