Sightsong

自縄自縛日記

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』

2016-04-04 22:47:26 | 北米

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』(新潮文庫、原著1946年)を読む。

アメリカ南部の田舎町。12歳の少女フランキーは、短髪で肘は汚れてがりがり、背が不安になるくらいの勢いで伸びていて、ガサツ。子どもの癖に(子どもだからというべきか)、自分の存在意義を見出すためにエキセントリックな言動を繰り返している。そして、自分の街を出ていくのだという妄想に憑りつかれ、現実性がまったくないにも関わらず、自分の想いに執着する。

フランキーは、もはや自分の土地からは解き放たれたのだと思い望み、街をうろつく。そうすると、まったく無縁であった大人たちと、突然、精神の「関係」が生まれることになる。過ぎ去る時間と、それに対する無力感のようなものがもたらす人間の変化が描かれる。

このあたりの転換は見事であり、(わたしは女子であった経験を持たないが)共感し、わかる、わかると言いたくなってしまう。


Swing MASA@山谷労働者福祉会館

2016-04-04 21:46:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

並木さんにお誘いいただいて、山谷労働者福祉会館に足を運び、Swing MASAのライヴを観る(2016/4/3)。

山谷は日雇い労働者の街であり、2、3千円の宿が多い(最近では外国人旅行者もよく泊まるそうだ)。会館の場所がよくわからず、周辺を何周かしてしまった。泪橋も近く、会館のとなりには「あしたのジョーの街」と書かれた古い看板があった。

Swing MASA (as)

建物の2階に上がってみると部屋には布団が積み上げられている。既にMASAさんがリハーサルをしていたのだが、実はてっきり男性だろうと思い込んでいて驚いた次第。

本番が始まってみると、MASAさんのアルトが突然強度を増す。なんでも「東京のギター奏者3人に声をかけたがみんな予定が埋まっていた」とのこと、iphoneに打ち込んだ伴奏や、それ抜きでのソロ演奏を行った。曲は「Don't Kill」といったMASAさんのオリジナルの他に、セロニアス・モンクの「Ruby, My Dear」や、マル・ウォルドロンの「Soul Eyes」、そして「上を向いて歩こう」では客が一緒に歌いもした。

MASAさんは、NYでジャズ修行をしていてリッキー・フォードに師事し、フォードがバンドに入っていたこともあってマル・ウォルドロンとも接し、またレジー・ワークマンの勧めでニュー・スクールに入ったりもしている。それでこそのマルの曲だったわけだ。

鋭くもあり、情もあって、ひとりで足踏みをしながら吹くMASAさんの音もたたずまいも好きになってしまった。MASAさんはいろいろな活動もされていて、そのことはあらためて紹介させていただきたい。

終わってから、並木さんと南千住の「駅前市場」でビールと旨い料理。千住界隈も入谷界隈も実は開拓したいと思っている。

Nikon P7800


白石雪妃+類家心平@KAKULULU

2016-04-04 07:35:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

類家心平『UNDA』(T5 Jazz Records、2015年)がなかなか素敵なサウンドで、マイルス・デイヴィスの「Maiysha」(『Get Up With It』)をカバーしていて本家よりもカッコいいありさまである。このRS5pb(Ruike Shinpei 5 piece band)を生で聴いてみたいところだ。

カバーを書いた書家の白石雪妃さんの「UNDA」展において書とトランペットとのパフォーマンスを行うと聞いて、東池袋のKAKULULUに足を運んだ(2016/4/3)。

Setsuhi Shiraishi 白石雪妃 (書)
Shinpei Ruike 類家心平 (tp, effecter)

白石さんは、ファーストセットでは黒い紙に金と墨で、セカンドセットでは床に広げた大きな白い紙に薄墨と金と濃い墨で、次々に字ならぬ形を展開していく。それは素人目にも見事な筆さばきだった。 

「UNDA」とはラテン語で「波」の意味だという。類家さんが左頬を膨らませながら放出するトランペットの音には、まさに書道のように濃淡のある波動のような印象を覚えた。

Nikon P7800

 

●参照
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年) 
森山・板橋クインテット『STRAIGHTEDGE』(2014年)