沖大幹『水の未来ーグローバルリスクと日本』(岩波新書、2016年)を読む。
気候変動の分野では「カーボンフットプリント」という概念がある。何かの人間活動それぞれについて、そのためにどれだけの温室効果ガスが排出されたかという手法であり、それなりに有用な手法と評価されている。温室効果ガスは世界のどこで出ても同等であるからだ。
本書で紹介される概念は、これと似た「ウォーターフットプリント」。話はカーボンほど簡単ではない。量も質も扱わなければならず、その重要さや影響度は場所や条件によってまったく違うからである。ただ、その結果を見せられるととても興味深いことがいろいろと見えてくる。
たとえば、食料自給率の低い日本は、大量の食料を輸入しているわけだが、それは、食料生産のために費やされた水も同時に輸入してきていることに他ならない。著者はそのことをもって、大資本や市場の機能を単純に否とはしない。それは、事実や分析結果をもって議論や政策決定が行われるべきだということを大前提としている。
●参照
米本昌平『地球変動のポリティクス 温暖化という脅威』(本書で引用)