Sightsong

自縄自縛日記

沖大幹『水の未来』

2016-04-21 22:22:36 | 環境・自然

沖大幹『水の未来ーグローバルリスクと日本』(岩波新書、2016年)を読む。

気候変動の分野では「カーボンフットプリント」という概念がある。何かの人間活動それぞれについて、そのためにどれだけの温室効果ガスが排出されたかという手法であり、それなりに有用な手法と評価されている。温室効果ガスは世界のどこで出ても同等であるからだ。

本書で紹介される概念は、これと似た「ウォーターフットプリント」。話はカーボンほど簡単ではない。量も質も扱わなければならず、その重要さや影響度は場所や条件によってまったく違うからである。ただ、その結果を見せられるととても興味深いことがいろいろと見えてくる。

たとえば、食料自給率の低い日本は、大量の食料を輸入しているわけだが、それは、食料生産のために費やされた水も同時に輸入してきていることに他ならない。著者はそのことをもって、大資本や市場の機能を単純に否とはしない。それは、事実や分析結果をもって議論や政策決定が行われるべきだということを大前提としている。

●参照
米本昌平『地球変動のポリティクス 温暖化という脅威』(本書で引用)


エグベルト・ジスモンチ@練馬文化センター

2016-04-21 07:16:58 | 中南米

練馬文化センターで、エグベルト・ジスモンチのソロライヴを観る(2016/4/20)。はじめの計画ではナナ・ヴァスコンセロスとのデュオであったところ、かれが急逝し、ジスモンチひとりだけになったという経緯があった。残念ではあるが、ならば代役は不要である。

Egberto Gismonti (g, p, 笙, fl)

冒頭に、笙によるシンセサイザーのような音の重なりを展開し、驚かされた。その後、ファーストセットは、ギター中心の演奏。

かれのギターは、繊細極まりない副旋律に力強い主旋律をかぶせていく。耳はふたつの物語を同時に追っていくのだが、一方、ノッてくるとそのふたつの旋律・物語が驚くほど有機的に絡み合い、そのままどこかに連れていかれるような感覚があった。ギターはときに軋み、ときにベースの働きもし、ときにナナのパーカッションが降りてきたりもした。メロディとリズムとが同列にあった。

フルートも吹いた。構造が工夫されたもののようで、倍音が出てきて、ギターに馴れた耳にとっては刺激剤だった。

セカンドセットはピアノ。ギター以上に、小さな小さな音を大事にする演奏であり、皆は息を呑んでかれを見つめていた。愉しげに転調を繰り返すピースもあり、また、「Silence」など故チャーリー・ヘイデンのナンバーも聴こえてきた。悼む友人は、ナナだけではないのだった。

そして最後の曲では、画面にスクリーンが降りてきて、そこに投影されたヴァーチャル・ナナとの共演。やり過ぎかと思ったのだが、それはまずいものになりようがなくて、胸にぐっとくるものがあった。