Sightsong

自縄自縛日記

マル・ウォルドロン『Meditations』

2017-03-06 23:58:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

マル・ウォルドロン『Meditations』(RCA Victor、1972年)を聴く。

Mal Waldron (p)

マル・ウォルドロンの吹き込みはどんなものでもマル的で、「外れ」みたいな作品がない。日本制作盤の『You and the Night and the Music』(1983年)や『Plays Eric Satie』(これも1983年)も滋味があって好きである。浮ついたものになりようもなかった個性だったというべきか。

本盤は、実に多作で人気もあった時代における日本でのライヴ。1972年、新宿DUGでのピアノソロである。親密な雰囲気の中で弾く、淡々としたピアノはやはりとても沁みる。

それはそれとして、「All Alone」とか「Left Alone」とか人気曲を弾き始めた途端に、知っているぞ自分は反応するぞと言わんばかりに火がついたように拍手する様子には、聴いていて恥ずかしくなってしまう。いまもその行動パターンは生き残っていると思うが。

●マル・ウォルドロン
マル・ウォルドロン最後の録音 デイヴィッド・マレイとのデュオ『Silence』(2001年)
マル・ウォルドロンの映像『Live at the Village Vanguard』(1986年)
『Interpretations of Monk』(1981年)
エリック・ドルフィー『At the Five Spot』の第2集(1961年)
ビリー・ホリデイ『At Monterey 1958』(1958年)


デイヴィッド・ビニー『The Time Verses』

2017-03-06 22:09:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

デイヴィッド・ビニー『The Time Verses』(Criss Cross Jazz、2016年)を聴く。

David Binney (as, vo, eletronics)
Jacob Sacks (p)
Eivind Opsvik (b)
Dan Weiss (ds)
Jen Shyu (vo) (6)
Shai Golan (alto part) (11) 

ビニーは不思議な音楽家だと思う。アルトサックスを吹くと、早いパッセージや低音・高音の迫力やコードからアウトした即興やなんかでは決してアピールしない。だからと言って面白くないわけではなく、聴けば聴くほど、中音域のぬめぬめしたソロが好きになってくる(ドナルド・ハリソンだってそうだったかもしれない)。

そして、ペドロ・アズナールの声がパット・メセニーのサウンドに与えた色のように、ビニーの声が入るとポップ色が快感領域まで急に高まる。本盤でも2曲目はそのように気持ちが良い。ダニー・マッキャスリン『Beyond Now』『Casting for Gravity』への貢献も忘れてはいけない。

本盤は、前作『Anacapa』とはうって変わってシンプルな編成。ジェイコブ・サックスの品のあるピアノ、アイヴィン・オプスヴィークの包み込むようなベース、柔軟なダン・ワイスのドラムスも良い。1曲だけ参加しているジェン・シューもやはり気持ちよく華を添えている。

いやー、ホントに気持ちいい。ビニーは日本で過小評価されていると言いたい今日この頃。

●デイヴィッド・ビニー
ダニー・マッキャスリン『Beyond Now』(2016年)
デイヴィッド・ビニー『Anacapa』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Fast Future』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Casting for Gravity』(2012年)