Sightsong

自縄自縛日記

ハービー・ハンコック『VSOP II TOKYO 1983』

2017-03-18 16:31:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

ハービー・ハンコック『VSOP II TOKYO 1983』(Hi Hat、1983年)を聴く。

Herbie Hancock (p)
Wynton Marsalis (tp)
Branford Marsalis (ts, ss)
Ron Carter (b)
Tony Williams (ds)

綺羅星のごとき豪華ゲストを集めて話題作を作るいまのハービー・ハンコックにはもう接近しないのだが、こういうのを聴くと、曲作りもピアノのセンスも良いなあと思わざるを得ない。

とは言え、1970年代後半のVSOPの看板を使い、当時ライジング・サンであったマルサリス兄弟を起用したこの企画も、話題先行型かもしれない。しかも80年代に入ってからの東京での興業(NHKラジオで放送されたという)。しかし良いものは良い。

何しろウィントン・マルサリスである。トニー・ウィリアムスの唯一無二の強力極まりないビートが煽っているはずなのに、冗談のように余裕しゃくしゃくである。しかも超つややかな音色にて、まるで考え抜かれたようなフレーズの即興を繰り出している。ハンコックの「The Sorcerer」ではスピーディに、ファッツ・ウォーラーの「Jitterbag Waltz」では(あとで考えれば)得意分野だとばかりに、1981年の『Herbie Hancock Quartet』でも素晴らしいソロを吹いていたセロニアス・モンクの「Well, You Needn't」ではまたまるで違う展開を、自身の『Wynton Maralis』(1981年)でも吹いていたトニー・ウィリアムスの「Sister Cheryl」では綺麗なロングトーンを。光輝くトランペットとはこのことだ。

「Sister Cheryl」は、トニー・ウィリアムス自身の新生ブルーノートでのアルバム『Foreign Intrigue』(1985年)でも印象的だった曲だ。トランぺッターはウォレス・ルーニー。かれの音がしばらく続くグループの持ち味のひとつではあったのだが、トニーはウィントンを使いたくはなかったのだろうか。

●参照
ネイト・ウーリー『(Dance to) The Early Music』(2015年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
ドン・チードル『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス空白の5年間』(2015年)
エリック・レヴィス『In Memory of Things Yet Seen』(2014年)
ハリー・コニック・ジュニア+ブランフォード・マルサリス『Occasion』(2005年)
アリ・ジャクソン『Big Brown Getdown』(2003年)
トニー・ウィリアムスのメモ(1996年)
ウィントン・マルサリス『スピリチュアル組曲』(1994年)
『A Tribute to Miles Davis』(1992年)
ジョー・ヘンダーソン『Lush Life』(1991年)
デイヴィッド・サンボーンの映像『Best of NIGHT MUSIC』(1988-90年)
ベルトラン・タヴェルニエ『ラウンド・ミッドナイト』(1986年)
トニー・ウィリアムス・ライフタイムの映像『Montreux Jazz Festival 1971』(1971年)
ジャッキー・マクリーン『The Complete Blue Note 1964-66 Jackie McLean Sessions』(1964-66年)
マイルス・デイヴィスの1964年日本ライヴと魔人(1964年) 


シカゴ・トリオ『Velvet Songs to Baba Fred Anderson』

2017-03-18 09:41:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

シカゴ・トリオ『Velvet Songs to Baba Fred Anderson』(RogueArt、2008年)を聴く。

Ernest Dawkins (ss, as, ts, perc)
Harrison Bankhead (b, cello)
Hamid Drake (ds, frame drum) 

本盤が発表されたのは2011年。その前年にフレッド・アンダーソンが亡くなっており、かれに捧げられたアルバムである。録音は2008年のことであり、アンダーソンばかりを意識しての演奏ではなかったに違いない。とは言え、アンダーソンが経営していたシカゴのヴェルヴェット・ラウンジでのライヴであり、ここでサックスを吹いているアーネスト・ドーキンスに、同じAACMの大先輩アンダーソンが与えた影響が小さかったわけはない。

アンダーソンのサックスには、音とフレーズの止めどないだだ漏れを恐れない、得体の知れぬ魅力があった。ドーキンスのサックスはそこまで人外の領域にはないものの、いままでの印象以上に多彩。アリ・ブラウン、ハナ・ジョン・テイラー、アンドリュー・ラム、チコ・フリーマンら、シカゴ・サックスに共通の渋いエネルギッシュさがあって、このようなスタイルは本当に好きである。「Down n' the Delta」では「聖者が街にやってくる」をサックス2本吹きで延々と披露するなどの過剰ぶりも素晴らしい。CD2枚分の間吹きまくりだ。

ハリソン・バンクヘッドは情熱的に弾き続け、ハミッド・ドレイクはいつもの乾いた音を鋭く発している。こんなトリオをシカゴで観たい。

●ハリソン・バンクヘッド
ジョージ・フリーマン+チコ・フリーマン『All in the Family』(2014-15年) 
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)

●ハミッド・ドレイク
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
ジョージ・フリーマン+チコ・フリーマン『All in the Family』(2014-15年)
マット・ウォレリアン+マシュー・シップ+ハミッド・ドレイク(Jungle)『Live at Okuden』(2012年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
サインホ・ナムチラックの映像(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Saxophone Man』(2008、10年)
デイヴィッド・マレイ『Live at the Edinburgh Jazz Festival』(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Live in Berlin』(2007年)
ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)
フレッド・アンダーソンの映像『TIMELESS』(2005年)
ヘンリー・グライムス『Live at the Kerava Jazz Festival』(2004年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2002年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
ペーター・ブロッツマン『Hyperion』(1995年)