ブルーノート東京にて、マリア・シュナイダー・オーケストラ(2017/6/10, 1st)。妙に若い人が多いが何でだろう。
Maria Schneider (comp, cond)
Steve Wilson (as, cl, fl)
Dave Pietro (as, fl)
Rich Perry (ts)
Donny McCaslin (ts, ss, fl)
Scott Robinson (bs, ts, ss)
Greg Gisbert (tp)
Jonathan Heim (tp)
Nadje Noordhuis (tp)
Mike Rodrigues (tp)
Keith O'Quinn (tb)
Ryan Keberle (tb)
Tim Albright (tb)
George Flynn (tb)
Gary Versace (accordion)
Frank Kimbrough (p)
Ben Monder (g)
Jay Anderson (b)
Clarence Penn(ds)
見るからに愉し気なアウラを身にまとったマリア・シュナイダーが出てきたあとは、もう魔術。マリアさんは事前に決めた通りに振る舞うのではなく、明らかに、その場の判断で柔軟な指揮をしていた。指示もゆるやかな感じである。しかし一方で、アンサンブルには緻密な感もある。何をしているのだろう。またソロイストが張り切っている間は、端に座って愉快そうにその演奏を眺めている。
最初はベン・モンダーがサウンドに柔らかさを与えたあと、トランペットのマイク・ロドリゲスとグレッグ・ギスバートの対決。ロドリゲスの力強い金属音に対しギスバートのこもった音が対照的。2曲目は『Concert in the Garden』の曲、ロドリゲスのトランペットとスティーヴ・ウィルソンのソプラノとの「dance」、ウィルソンの音が良い。3曲目はギスバートのトランペットに続き、ライアン・ケベールのまろやかなトロンボーン、ウィルソンのアルト、ゲイリー・ヴェルサーチのアコーディオン。
4曲目と5曲目は『The Thompson Fields』の収録曲である。前者ではリッチ・ペリーがサウンドと一体化するようなソフトなテナーを吹いた。後者ではスコット・ロビンソンがそれまでのバリトンからテナーに持ち替え、まるで虫の羽音が聴こえるような見事な音を発した。
6曲目は「sailing」がテーマの曲。ここでフィーチャーされたのはフランク・キンブロウとダニー・マッキャスリンである。キンブロウももちろん良いのだが、驚きはマッキャスリン。それまで敢えて大人しくしていたかのように、鎖をほどかれた野獣は、実にレンジが広くリズムも自在なテナーソロを繰り広げた。おそらくオーディエンスの多くが歓喜に眼を見開いてマッキャスリンのソロを凝視していたであろう。さすがである。これに対しマリアさんは、やはり歓喜と、そして猛獣使いの眼をもって、マッキャスリンを逃がすまいと見つめながらかれににじりより、また檻に入れんとして愉しそうにバンドメンバーを操った。そして最後は、デイヴ・ピエトロをフィーチャーした短い曲で締めくくった。
なるほどね、これでは音楽の化身のように言いたくなるのも不思議はない。
●マリア・シュナイダー
マリア・シュナイダー『The Thompson Fields』(2014年)
マリア・シュナイダー『Allegresse』、『Concert in the Garden』(2000、2001-04年)
●ベン・モンダー
ベン・モンダー『Amorphae』(2010、13年)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』(2006年)
●ダニー・マッキャスリン
ダニー・マッキャスリン『Beyond Now』(2016年)
デイヴィッド・ボウイ『★』(2015年)
ダニー・マッキャスリン@55 Bar(2015年)
ダニー・マッキャスリン『Fast Future』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Casting for Gravity』(2012年)
フローリアン・ウェーバー『Criss Cross』(2014年)
マリア・シュナイダー『The Thompson Fields』(2014年)
マリア・シュナイダー『Allegresse』、『Concert in the Garden』(2000、2001-04年)
●ライアン・ケベール
ライアン・ケベール&カタルシス『Into the Zone』(2014年)