Sightsong

自縄自縛日記

池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri

2018-01-05 07:32:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2018/1/4)。

1. ソロ
Akihiko Ando 安藤暁彦 (electronics)

告知されていたサックスは使わずエレクトロニクスのみ。ラップトップPCに接続されたLIVIDのコントローラーには4×8個のつまみがあり、それを操ってサウンドを創る。

はじめはぶちぶちというノイズがかすかに駆動力として機能する。そのうちにさまざまな音色と音量の音波がビートとなり、複合し、面白くなっていった。

2. トリオ
Naoto Yamagishi 山㟁直人 (ds, perc)
Darren Moore (ds)
Yoko Ikeda 池田陽子 (vla)

はじめにダレンさん(以下D)は櫛などを、山㟁さん(以下Y)は弦を使い、擦りのフェーズ。池田さん(以下I)のヴィオラとともに連続的な音を発し、不安を昂らせる。Dはスティック、Yは金属板も使う。そしてDがシンバルを叩き鳴らしたことが、それまで醸成されたヴァルネラブルな空気のなかで恐怖として作用したように聴こえた。

つぎにIが連続的なヴィオラに断絶を入れ、それを機にダイヴァーシファイされたフェーズとなった。Dはブラシでシンバルを鳴らすが、既に聴き手の脳はこの破断に馴らされている。Yは弦や金属片で擦り、超高音を創る。

発散した音が、Iの次々にシフトしていく周波数により、収斂してきた。三者の各々の音が生き物のように跳躍し、夜の奇妙なパーティを想像させる。

フェーズは残響へ。D、Yともにシンバルを効果的に用いる。Iのヴィオラは運命的な物語を思わせるように奏でられ、それが可視世界だとして、YとDのサウンドは意識下をまさぐるようにも思われた。

YとDとの超高音のハウリング。その中でも他の音のディテールが却って浮き彫りになってきて面白い。Iのヴィオラは、ノイズとともに、生物の息遣いが弱くなっていくように聴こえる。Dは別のドラムでノイズを、またYは枯草を持ち込み、ドラムを直接息と声とで震わせはじめた。

そして破裂のフェーズ。Dの音はドラムスの素材を破くのではないかと思えるほどである。Iは弦を指ではじいた。Yは正のフィードバック的に音をさらに次の音に向けて激しくしていった。破裂の臨界点に向かってのサウンドとなった。

音のフェーズとは、音域だけでなく、それを発する媒体のサイズや響かせる時間の長さといった音楽的な距離によっても変わってくるものにちがいない。この日のサウンドは、三者のゆるやかな合意により、フェーズを次々に変貌させてゆく、贅沢なものだった。

●ダレン・ムーア
サイモン・ナバトフ@新宿ピットイン(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天(2017年)