成城学園前にできたばかりのアトリエ第Q藝術にはじめて足を運んだ(2018/1/8)。
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Chikako Kaido 皆藤千香子 (dance)
第1部は齋藤徹・喜多直毅デュオ。
はじまりは、コントラバス、ヴァイオリンそれぞれの音の領域がある。擦る、振る、叩く、つねる(つねらないか)、はじく。多様な手を使ってその音領域が重ね合わされる。喜多さんはまるで宇宙と交信するかのように外部との接点を音にし、また、テツさんのコントラバスからはわらべ歌のような旋律も聴こえる。
目の前の世界からなにかをたぐりよせようとするような、手段としての引っかき合い。ふたりの倍音とノイズはときに親しみやすく、ときに人の手の届かぬ音にもなってしまう。喜多さんが小さな振幅を繰り返し、それにより大きなうねりを創り出す。テツさんは楽器の違いもあり、その変動のサイズが異なるところをみせる。ひとしきりこれらの離合があって、擦りのアンサンブルに至った。やや狂った感覚もあった。
このあたりでテツさんの弓が2本、床に落ちた。しかしそれも音楽の一部となったことは愉快な発見だった。喜多さんが激しく動き、テツさんは敢えてたたらを踏む。このふるまいや音ももちろん音楽となった。
テツさんのコントラバスは、指や2本の棒で激しくはじくたびに、ミクロな塵芥が自分自身の存在に気付いたかのように放出されるものに聴こえた。
第2部は皆藤千香子さんも入ってのトリオ。
テツさんが空気を一変させる意図があってなのか、はじめに大きな音を出し漸減させた。喜多さんのヴァイオリンは対照的にかすかな音。しかしふたりの音は連続的に変化してゆき、素晴らしい倍音を創出する。その中でテツさんが左手の指でときどき弦をはじく。
しばらくじっとしていた皆藤さんが、横向きにつつつとサウンドの領域内に入ってきた。動きは動きそのものに意味があるものだと思うが、それにしても、観る私(たち)は、そこにドラマ性を見出してしまう。
生命の発散もあった。皆藤さんが両手で顔を挟み、そのまま前に突き出す動きからは、不可逆の人生を生きることに対する葛藤のようなものを感じた。鳥のような大きな飛翔もあった。枷に身体の自由を奪われた中での動きを感じさせるものもあった。そして、テツさん、喜多さんのサウンドと相互に侵入するかのような動きもあった。魅せられてしまった。
ところで、このアトリエ第Q藝術は、2016年末に明大前のキッドアイラック・アートホールがなくなり、その精神を継ぐような形で作られたスペースである。なんと改造前は、高山辰雄のアトリエであったという。
天井が高く、木の壁と木の床であるためか響きがとても柔らかい。コンクリート内装のキッドアイラックとはまた性質が異なる音の良さである。今後のイヴェントが楽しみだ。
Fuji X-E2、XF60mmF2.4、XF35mmF1.4、Nikon P7800
●齋藤徹
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン
●喜多直毅
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
●皆藤千香子
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)