Sightsong

自縄自縛日記

クリス・デイヴィス『Duopoly』

2018-01-04 23:44:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・デイヴィス『Duopoly』(Pyroclastic Records、2015年)。8人のミュージシャンとのデュオ集であり、曲を演奏する前半と、相方の順番を逆にしてフリーインプロを行う後半との全16曲から成る。

また、同じ演奏がCDとDVDとに収録されている。DVDは左半分にクリス・デイヴィス、右半分に相方という形であり、CDの音源を何度も聴いた後に観ると、ああそういうことだったのかと納得する点が少なくない。あるいはその逆でも楽しめるかもしれない。

Kris Davis (p)
Bill Frisell (g)
Julian Lage (g)
Craig Taborn (p)
Angelica Sanchez (p)
Billy Drummond (ds)
Marcus Gilmore (ds)
Tim Berne (as)
Don Byron (cl)

相方も、ギター、ピアノ、ドラムス、管楽器がそれぞれふたりずつ。よく考えられているし、実際に比較の妙がある。

ビル・フリゼールは大きな物語で(音のサイズもそうだが)包み込むようであり、ジュリアン・ラージは尖らせて刺す。クレイグ・テイボーンは思索的にピアノの二重らせんの間に音を挟んでくるようであり、アンジェリカ・サンチェスはデュオで何かの形を見つけようとしているように聴こえる。ドラムス美学の形を最初から提示するマーカス・ギルモア、一方、何を出そうかと苦悩しながら多様なビートを繰り出してくるビリー・ドラモンド(ジェレミー・ペルトとの共演でその姿を観たときかなり驚いた)。そして独自の強度をもつティム・バーンと、久しぶりに観る知的なドン・バイロン。

これもクリス・デイヴィスの表現の幅があるからこその成果なのだろうと思うのだが、では、デイヴィス自身の個性は何かというと、まだよくわからない。確かにきらびやかで、攻めにも受けにも回っていてとても刺激的ではあるのだが。

●クリス・デイヴィス
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
マックス・ジョンソン『In the West』(JazzTokyo)(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(2008年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)


マーク・ドレッサー『Unveil』、『Nourishments』

2018-01-04 11:10:49 | アヴァンギャルド・ジャズ

去年(2017年9月)に巨匠マーク・ドレッサーの演奏を目の当たりにして、ああこういう人だったのかと感動のようなものを覚えた。それ以来、バンドのベーシスト以上には聴こえなかった音が、耳と脳の中で主役に躍り出たのだから面白いものである。

『Unveil』(clean feed、2003-2004年)

Mark Dresser (b)

個人的なスタジオで録音されたコントラバスソロ。マイクはベース本体とスピーカーにひとつずつ使われ、多重録音や編集は施されていない。

ドレッサーの音はことさらに重低音を効かせたものではない。ノイズは破裂的なものではなく、割れたような音もコアからさほど離れてはいないように感じられる。だからと言って音が細いというわけではなく、むしろ、豊かな倍音に注意が集まる。ときには口琴の音のように聴こえたりもする。これは聴き惚れる。

『Nourishments』(clean feed、-2013年)

Rudresh Mahanthappa (as)
Michael Dessen (tb)
Denman Maroney (hyperpiano)
Mark Dresser (b)
Tom Rainey (ds) (1,2,3,5)
Michael Sarin (ds) (4,6,7)

もちろんこの面々のなかで、個性的なルドレシュ・マハンサッパのアルトはかなり目立っているし、トム・レイニーの豪放に叩き落すようなドラミングも良い。デンマン・マロニーの「ハイパーピアノ」とはなんだろうか、ただ内部奏法もオーソドックスな演奏も混ぜ、ドレッサーの弦と絡み合っている。

そしてここでドレッサーのベースが一貫して存在感を発揮している。アンサンブルの巧みさもあるのだろうし、即興演奏において随時そのようにアンサンブル的にベース音を入れてくるということもあるのだろう。サウンドを下から力強く押し上げるというよりは、サウンドの隙間を豊かな音によって埋めてゆくようである。

●マーク・ドレッサー
マーク・ドレッサー7@The Stone(2017年)
マーク・ドレッサー7『Sedimental You』(2015-16年)
『苦悩の人々』再演
(2011年)
スティーヴ・リーマン『Interface』(2003年)
ジェリー・ヘミングウェイ『Down to the Wire』(1991年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)


ディー・ディー・ブリッジウォーター『Memphis... Yes, I'm Ready』

2018-01-04 00:14:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

ディー・ディー・ブリッジウォーター『Memphis... Yes, I'm Ready』(Okeh Records、2016年)を聴く。

Dee Dee Bridgewater (vo)
Kirk Whalum (ts, bs)
John Stoddart (key)
Lawrence "Boo" Mitchell (el-bongo, sizzle cymbal, tambourine)
Charles Hodges (hammond organ)
Jackie Clark (b)
Garry Goin (g)
James "Bishop" Sexton (ds)
Marc Franklin (tp)
Lannie McMillan (ts)
Kirk Smothers (ts)
Kameron Whalum (tb)
Kevin Whalum, Sharisse Norman, Candise Rayborn-Marshall, Stax Music Academy (backup vo)  

ディー・ディー・ブリッジウォーターのステージを観たのはもうずいぶん前で確か20世紀。ミルト・ジャクソンらによる完璧なバックアップもあり、リラックスしてマリリン・モンローの真似をしたりして観客を笑わせ、歌って踊り、それはもうチャーミングだった。目がハートになった。

本盤はディー・ディーが生まれたメンフィスをテーマにして、エルヴィス・プレスリー、B.B.キング、オーティス・レディングらが歌ったR&B/ソウルなどの歌を楽しそうに披露している。しかも、ハモンドオルガンやホーンセクションによるゴージャスなサウンドをバックにして。ハスキーな声で、元気がよくて、可愛くて、メロウで、ソウルフルで、なんてことしか言えないのだ。ディー・ディーならこのくらいは当然か。