クリス・デイヴィス『Duopoly』(Pyroclastic Records、2015年)。8人のミュージシャンとのデュオ集であり、曲を演奏する前半と、相方の順番を逆にしてフリーインプロを行う後半との全16曲から成る。
また、同じ演奏がCDとDVDとに収録されている。DVDは左半分にクリス・デイヴィス、右半分に相方という形であり、CDの音源を何度も聴いた後に観ると、ああそういうことだったのかと納得する点が少なくない。あるいはその逆でも楽しめるかもしれない。
Kris Davis (p)
Bill Frisell (g)
Julian Lage (g)
Craig Taborn (p)
Angelica Sanchez (p)
Billy Drummond (ds)
Marcus Gilmore (ds)
Tim Berne (as)
Don Byron (cl)
相方も、ギター、ピアノ、ドラムス、管楽器がそれぞれふたりずつ。よく考えられているし、実際に比較の妙がある。
ビル・フリゼールは大きな物語で(音のサイズもそうだが)包み込むようであり、ジュリアン・ラージは尖らせて刺す。クレイグ・テイボーンは思索的にピアノの二重らせんの間に音を挟んでくるようであり、アンジェリカ・サンチェスはデュオで何かの形を見つけようとしているように聴こえる。ドラムス美学の形を最初から提示するマーカス・ギルモア、一方、何を出そうかと苦悩しながら多様なビートを繰り出してくるビリー・ドラモンド(ジェレミー・ペルトとの共演でその姿を観たときかなり驚いた)。そして独自の強度をもつティム・バーンと、久しぶりに観る知的なドン・バイロン。
これもクリス・デイヴィスの表現の幅があるからこその成果なのだろうと思うのだが、では、デイヴィス自身の個性は何かというと、まだよくわからない。確かにきらびやかで、攻めにも受けにも回っていてとても刺激的ではあるのだが。
●クリス・デイヴィス
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
マックス・ジョンソン『In the West』(JazzTokyo)(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(2008年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)