Sightsong

自縄自縛日記

中国延辺朝鮮族自治州料理の店(2) 池袋の千里香

2018-01-13 23:36:54 | 中国・台湾

中国東北地方・吉林省の延辺朝鮮族自治州の料理は、中国、北朝鮮、韓国の要素が入り混じっていて、独特で旨い。最相葉月『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』に書かれているように、このあたりの人たちは民族大移動と言っても大袈裟でないほど外に出てきている(中国沿岸部、韓国、日本)。そんなわけで、移住先の人が多ければ料理店も真っ当なものとなることは当然である。なお、戦時中に獄死させられた詩人・尹東柱の故郷でもある。

実は前から犬肉を食べたかったのだが、常にあるものではないようで、昨年も池袋の千里香でも楽楽屋でもメニューにはあっても実際には食べられなかった。最近また入ってきたという話を聞き、この地域出身の友人と、池袋の千里香を再訪した(なお、大久保にも店舗がある)。

着いてみると大人気で、20分くらい待つことになった。店内では中国語や韓国語しか聞こえてこない。そして「犬肉あります」との貼紙がある。ついにたどり着いた。

犬肉料理は火鍋や炒め物などもあったのだが、家庭料理はこれだというので、スープを頼んだ。やや白濁しており、臭い消しなのか香草が入っている(ちょうど沖縄の山羊料理にフーチバーが使われるように)。肉はほろほろと柔らかく、とても食べやすい。豆板醤を好きなだけ入れて辛くし、ご飯と一緒に食べると最高だった。そしてしばらく食べているうちに、なんとなく癖がわかってきた。

他には、豚肉を澱粉のふわふわした衣で揚げて甘いたれをかけた料理。また、山の人参を干したあとに水で戻し、両面を焼く料理。これらは北朝鮮にもある。そして好物、太刀魚の揚げ物。韓国ではスーパーの鮮魚コーナーでひときわ目立っているが、日本では西の食べ物である。

実は、やはり北朝鮮料理にもある黒い餃子も食べたかったのだが、さすがに腹が一杯で無理だった。はじめてウランバートルの北朝鮮料理店で目にしたときには仰天したものである。皮を作るジャガイモを一度凍らせてすりおろす段階で変色するからなのであり、極寒の気候風土ならではの料理だということができる。

ところで、店内には、「美国加州」(アメリカ・カリフォルニア州)の牛肉面なる麺料理のポスターが貼られている。何でも、かつて延辺でカリフォルニアの麺というものが大流行し、それが現地でアレンジされたものであるようだ。元のカリフォルニアの麺とはどんなものだったのだろう。食べ物の伝播とは実に面白いものだ。

さてこれで元気になるかな。

●参照
中国延辺朝鮮族自治州料理の店 浅草の和龍園
旨いウランバートル その3
旨いウランバートル その2
旨いウランバートル
高野秀行『移民の宴』
最相葉月『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』
朝鮮族の交流会
詩人尹東柱とともに・2015
尹東柱『空と風と星と詩』


ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』

2018-01-13 09:45:21 | アヴァンギャルド・ジャズ

ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(Klein、2013年)を聴く。

Joachim Badenhorst (cl, bcl, ts)
John Butcher (ts, ss)
Paul Lytton (perc)

聴く前からわかっているようなものだけれど、ヨアヒム・バーデンホルストとジョン・ブッチャーの違いが面白い。ブッチャーは、仔細に情報が書き込まれた羊皮紙を何枚も自在に積み重ねて力技で提示する感覚。一方のバーデンホルストは、もっとファジーに回路の隙間を覗き込んだり全体を包み込んだりして遊泳する感覚。このふたりにとって時間のピッチのとらえ方も違うのではないか、なんて思ったりして。

ポール・リットンは張りのゆるいドラムや割れたシンバルを叩き、この対決とは言えない出逢いをさらに曖昧なものにしている。

●ヨアヒム・バーデンホルスト
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●ジョン・ブッチャー
ジョン・ブッチャー+ジョン・エドワーズ+マーク・サンダース『Last Dream of the Morning』(2016年)
歌舞伎町ナルシスの壁(2016年)
ジョン・ブッチャー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2015年)
鈴木昭男+ジョン・ブッチャー『Immediate Landscapes』(2006、15年)
ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』(2015年)
ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』(2014年)
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』
(2014年)
ジョン・ブッチャー@横浜エアジン(2013年)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
ジョン・ブッチャー『The Geometry of Sentiment』(2007年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
『News from the Shed 1989』(1989年)

ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年) 

●ポール・リットン
ガイ+クリスペル+リットン『Deep Memory』(2015年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)