登川誠仁『せい小やいびーん』(アカバナー/TERURIN RECORDS、2009-11年)を聴く。
登川誠仁(唄・三絃)
仲宗根創(唄・三絃)
前川守賢(太鼓・囃子)
よなは徹(太鼓・囃子)
これが実質的に最後のライヴであったという。場所はコザ、「てるりん祭」というストリート・ライヴであり、観客との距離は物理的にも精神的にもとても近かったのであろう。20世紀になったばかりのころに、大きなホールで登川誠仁を観たことはあるけれど、その意味ではまったくちがったものだったに違いない。
誠小さんの悠然たる間合いも、いちど聴いただけでそれとわかる独特な声も、最後まで健在だったのだな。「とぅばらーま」のあとに「六調節」ではりあげる声にはまだまだ力があった。誠小といえば速弾きであったという、その確固としたテクによる三線の音は立っており、もうひとりの仲宗根創の三線と抜きつ抜かれつ並走していて実にスリリングで気持ちがいい。
ところで、その仲宗根創という唄者の名前をはじめて知った。藤田正さんの解説によれば、かれは1988年生まれ、小さな頃から「登川誠仁のフォロワー」と話題を集めた人であるらしい。フォロワーとはいえ、また違う色艶のある歌声である。機会があればライヴを観てみたい。
●登川誠仁
『1975年8月15日 熱狂の日比谷野音』(1975年)
小浜司『島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代』