NHKの『沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜』は力作だった。
「武器としての写真」による社会的な告発をねらった平良孝七は、自身の職業スタンスとの矛盾に苦しんでもいた。その相克は、実は屋良朝苗琉球政府主席を背後から捉えた写真や、施政権返還時のかれらしくないアレ・ブレ・ボケ写真としてかたちになってもいたということが納得できる。 だから、告発に「むなしさ」を感じてから「ただ視る」ことを実践してきたということが実感できる写真群(番組にも登場する仲里効さんが『フォトネシア』で書いている)や、アイコンとして利用されてきた少女の写真などは、平良の世界のすべてではない。
番組の最後に、山城知佳子さんが自身と戦争体験者との顔を重ね合わせ、体験談を同じ口から語らしめる動画作品《あなたの声は私の喉を通った》について話している。現代のわたしたちは戦争体験者と同じ怒りや感情を持つことはできない。それを表現としたものでもあった、と。これは平良の感じた「むなしさ」と表裏一体のものかもしれない。ちょっと驚いた。
沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜 - ETV特集 - NHK
手元にある『沖縄カンカラ三線』(三一書房、1982年)
●参照
琉球弧の写真、石元泰博
コザ暴動プロジェクト in 東京
平良孝七『沖縄カンカラ三線』
『山城知佳子 リフレーミング』@東京都写真美術館
仲里効『フォトネシア』