近ごろ陰惨な事件が増えたって言い方をするけど、近ごろって何時頃からだろう。陰惨な事件ってどういう性質の事件だろう。少年たちが「浮浪者狩り」をして殺害せしめた事件は間違いなくそれに含まれると思うが、もう20年も前の話だったか。全然「近ごろ」じゃないね。
著者が浮浪者の境遇を知るべく、横浜は寿町のドヤに投宿して「エサ」を拾い、老ルンペンはじめとする界隈の「住人」と話をしたり、若いカメラマンと交流したり。イメージでしか知らない世界のルポかと思えば、加害者少年の「独白」章があったり、受験に失敗して引き篭っちゃった作者の息子の話があったり。ルポみたいな私小説というか。寿町は近くにアマチュア無線ショップがあって行きしなに通ったりしたので、ちょっと雰囲気が分かる。
本文中、作者はこんな風体でそれらしい生活を送ってみても、それは結局「彼ら」を観察しているだけだという苦いジレンマを告白する。正直だな。でもジレンマがあったとしても、「彼ら」の生活の一端を世の中に紹介し、事件について考える…もっと言えば浮浪者や少年たちが存在する社会システムについて…考えさせるきっかけとして、この本の存在価値は十分にある。
事件から20年以上、世の中はたぶんもっと残酷になっているんじゃないかな。
2008年6月26日 通勤電車車中にて読了
著者が浮浪者の境遇を知るべく、横浜は寿町のドヤに投宿して「エサ」を拾い、老ルンペンはじめとする界隈の「住人」と話をしたり、若いカメラマンと交流したり。イメージでしか知らない世界のルポかと思えば、加害者少年の「独白」章があったり、受験に失敗して引き篭っちゃった作者の息子の話があったり。ルポみたいな私小説というか。寿町は近くにアマチュア無線ショップがあって行きしなに通ったりしたので、ちょっと雰囲気が分かる。
本文中、作者はこんな風体でそれらしい生活を送ってみても、それは結局「彼ら」を観察しているだけだという苦いジレンマを告白する。正直だな。でもジレンマがあったとしても、「彼ら」の生活の一端を世の中に紹介し、事件について考える…もっと言えば浮浪者や少年たちが存在する社会システムについて…考えさせるきっかけとして、この本の存在価値は十分にある。
事件から20年以上、世の中はたぶんもっと残酷になっているんじゃないかな。
2008年6月26日 通勤電車車中にて読了