日々のつれづれ(5代目)

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宇田賢吉著 「電車の運転」(中公新書)

2008-07-12 09:17:13 | 本・映画・展覧会
 飛行機の操縦や電車の運転に興味を持たなかった人はあまり居ないと思う。特に男性においては。これまで、飛行機の操縦に関してはさまざまな本(多くは「キャプテン本」)があったが、電車の運転に関しての一般的な本は雑誌の記事以外にきちんと纏まった物はほとんど見かけなかったように思う(もちろん、その筋の本屋に行けば専門図書みたいなのはあるだろうが)。本書中に出てくる鉄道用語は専門的ではあるがさほど難しくなく、平易な解説も多いため知識のない向きにも気軽に読めそうである。

 本書は、JRを退職した元運転士が、電車を中心とした運転システムの概要と実際の運転について記したもので回顧的な読み物ではなく、実践的な解説である。各所に挿し入れられた写真や図表が理解に役立つ。

興味深いのは山陽本線西阿知~倉敷間4.0kmの運転を写真と文章で解説する編。「運転室展望ビデオ」のコマ送り版だが、秒単位の経過と状況、次に備えることなどが簡潔に記載されて面白い。この果てしない連続が列車を安全に目的地へと運んでゆくのだと思うと気が遠くなりそうだ。

 福知山線脱線事故で大いに注目された「運転士の心理」についての記述も見逃せない。定時運転について、停止位置について、車両状況の監視について…そうした中で、運転方式を知らない管理者についての苦言がチラと掛かれていたりすることも見逃せない。

 読み終わった後は「かぶりつき」しなくても電車の挙動が気になり、ホームで交替の運転士を見かければ「ご苦労様」の声も素直に出そうな一冊である。

 2008年7月6日 休日出勤の通勤電車車中にて読了
コメント (1)
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