多作な吉村作品群の中でも北海道を舞台にした作品は多く、「熊嵐」「間宮林蔵」「赤い人」と読んできたので本作にも手を出した。本作は北海道が舞台ではなく、作中に網走刑務所が出てくるということなのだが。
脱獄の名人が何度も脱獄しては捕まり、看守を翻弄しながらまた脱獄する物語。ただ、スリリングな脱獄シーンは描かれない。手口の解説は、後から警察が調べた推定と、捕まった後の主人公(脱獄囚)の自供による。
本書の何が面白いか。「赤い人」同様、北海道では過酷な自然そして戦時中は食料不足のさなかの過酷な労役の模様、そんな中で主人公と看守の心理的攻防、或いは監獄と言う世界の描写。「次はどういう手口で脱獄するだろう」と言うルパン三世的ワクワク感よりも、当時の懲役世界の描写に引き込まれた。遠い世界の物語だが、今でも表沙汰にならない程度に看守の横暴は続いていると聞く。
2020年5月9日 自宅にて読了
脱獄の名人が何度も脱獄しては捕まり、看守を翻弄しながらまた脱獄する物語。ただ、スリリングな脱獄シーンは描かれない。手口の解説は、後から警察が調べた推定と、捕まった後の主人公(脱獄囚)の自供による。
本書の何が面白いか。「赤い人」同様、北海道では過酷な自然そして戦時中は食料不足のさなかの過酷な労役の模様、そんな中で主人公と看守の心理的攻防、或いは監獄と言う世界の描写。「次はどういう手口で脱獄するだろう」と言うルパン三世的ワクワク感よりも、当時の懲役世界の描写に引き込まれた。遠い世界の物語だが、今でも表沙汰にならない程度に看守の横暴は続いていると聞く。
2020年5月9日 自宅にて読了