原題:『82년생 김지영』
監督:キム・ドヨン
脚本:ユ・ヨンア
撮影:イ・ソンジェ
出演:チョン・ユミ/コン・ユ/キム・ミギョン/コン・ミンジュン/キム・ソンチョル
2019年/韓国
「告発」と「エンターテインメント」の相性について
原作は未読ながらその本来の目的は33歳で1歳の娘のアノンを育てている主人公のキム・ジヨンが社会に巣くっている女性蔑視によって、少しずつ精神を病んでいく様子を描くことで女性の社会進出がどれほど遅れているのか告発することにあるのだと思う。それは夫のチョン・デヒョンの実家を訪れ、昔気質の夫の母親や夫の親族たちに気を使い料理や洗い物などで疲れ果てた末のジヨンの謎の言動により予定より早く帰宅してしまうところから始まり、実家に帰ったところでジヨンと母親のミスクと姉のウニョンよりも父親のヨンスは一人息子のジソクを贔屓しているのだが、女性陣は文句は言えないのである。
そもそもミスクからして5人兄弟を進学させるために義務教育が終わったと同時に裁縫の仕事に携わり、仕事中に手に大怪我をした跡が残っている。
しかし本作は原作とは違うようで、ジヨンの精神の「病み方」に問題がある。ジヨンが病気であることをデヒョンの母親から聞いたミスクがジヨンの家を訪れるのだが、ミスクが帰ろうとした時に、ジヨンにミスクの母親が憑依してミスクに苦労をさせたことを謝罪するのである。この演出はエンターテインメントとしては成功していると思うが、原作にあった男性に対する女性の「告発」は弱まってしまうように見えるのみならず、これは韓国文化特有の「現象」にも見えてしまうのである。
ラストシーンは子供の頃から夢だった小説家になることでジヨンは病気を克服するのであるが、それはジヨンだから出来ることであり女性の地位向上に貢献するとは思えないのだが、だいたいフェミニストと呼ばれる人は個人として地位向上を成し遂げた人たちで、いつも「女性」は置いてけぼりなのではある。
ジヨンがベビーシッターを探すために街中に貼紙を貼り、幸か不幸か応募者はいなかったのだが、それで応募してきたどこの馬の骨だか知れない人を本当に雇うのだろうか?