原題:『タイトル、拒絶』
監督:山田佳奈
脚本:山田佳奈
撮影:伊藤麻樹
出演:伊藤紗莉/恒松祐里/佐津川愛美/片岡礼子/でんでん/モトーラ世里奈/池田大/般若
2020年/日本
『カチカチ山』のタヌキの「かわいらしさ」について
『ジオラマボーイ・パノラマガール』(瀬田なつき監督 2020年)はまだ主人公のカップルが2人とも17歳の高校生だったから、暗喩として提示される「光」には微かな希望を認めることもできたのだが、ありふれた人生を変えようとデルヘリで働こうとするものの、土壇場で嫌になってホテルから逃げ出してスタッフとして働く主人公のカノウの職場で、その出番を待ち構えるライターの「炎」は彼女たちの人生がいつ終わってもおかしくない危うさしか感じられず、せめてラストシーンにおいて希望が描かれていれば良いと思いながら観ていると、事務所で号泣するカノウを傍らで、若い女の子をホテルに連れ込もうとしている経営者の山下は従業員のアツコに刺され、マヒルは御茶ノ水にある雑居ビルの屋上まで上って不穏な動きを示し、マヒルの妹の和代は背後から追ってきた男に襲われようとしている。
本作に全く希望を見いだせない原因を勘案するならば、小学生の頃にカノウがクラス会で披露した『カチカチ山』のお芝居のエピソードが気になる。賢くてかわいらしいウサギの役はみんながやりたくて取り合いになるのに、自分には誰も目もくれないタヌキの役があてがわれたというものだが、個人的にはカノウ(つまり伊藤紗莉)のタヌキ役はどうしたってかわいくなると思う。考え過ぎてデッドエンドに陥っているのではないだろうか?