原題:『ジオラマボーイ・パノラマガール』
監督:瀬田なつき
脚本:瀬田なつき
撮影:佐々木靖之
出演:山田杏奈/鈴木仁/滝澤エリカ/若杉凩/斉藤陽一郎/黒田大輔/成海璃子/大塚寧々
2020年/日本
「恋愛ごっこ」の「輝き」について
瀬田なつき監督の前作『PARKS パークス』(2017年)は個人的には傑作だと思っているが、今回はわざわざ岡崎京子の『ジオラマボーイ パノラマガール』を原作として選択したことに野心を感じる。そもそも主人公の渋谷ハルコと神奈川ケンイチは「ロマンチックラブイデオロギー」に憑りつかれた17歳の高校生で、きらびやかな恋愛を目指すもののことごとく失敗するために、それを傍で見ている私たち観客は必然的に「失敗作」を見せられる羽目に陥るのであるし、そのありきたりな物語を演じる人物はスターであってはならないためにキャスティングも地味でなければならないからである。
それを端的に示しているのはラストシーンで、渋谷の建築中の高層マンションで共に一夜を過ごしたハルコとケンイチが始発電車で自宅とは反対方向の電車に乗ろうとするが、乗れたのかどうかはともかく、その「反抗」でさえ「ロマンチックラブイデオロギー」に組み込まれたものである。
だからそのシーンの後に、ハルコの親友のカエデが小学生のタイラとキンヤと一緒に高層マンションの屋上から渋谷の街並みを見ていると、カエデが一瞬光る建物を見つけるも、小学生たちは見損なうのだが、やがて3人は空に光る物体を発見する。つまりハルコとケンイチの「恋愛ごっこ」はジオラマ的にもパノラマ的にも一瞬の光に過ぎないのだが、「光」であることに間違いはなさそうである。