MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『サンダーロード』

2020-11-20 23:02:41 | goo映画レビュー

原題:『Thunder Road』
監督:ジム・カミングス
脚本:ジム・カミングス
撮影:ローウェル・A・マイヤー
出演:ジム・カミングス/ケンダル・ファー/ニカン・ロビンソン/ジョセリン・デボアー
2018年/アメリカ

エキセントリックな主人公の謎の行動について

 若い頃のナンニ・モレッティ監督の作風にそっくりで、見た目も本人のエキセントリックな性格も似ているためにパロディのように見える。
 ブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」をモティーフにしているのだが、「涙のサンダーロード」が流れないのは権利が得られなかったのだろうか?
 ここではどうしても理解できないシーンについて記しておきたい。主人公で警官のジム・アルノーが姉のモーガンの家を訪れて、帰り際にコップを持たされる。その後、ジムはそのコップに何かを入れてある家の前に置いたまま母親の墓参りをすることになるのだが、このシーンは何を意味するのだろうか? その直後、娘のクリスタルの親権を巡って係争中だった元妻のロザリンドがオーバードーズで亡くなっているのである。相棒のネイトと口論になった際にもいつの間にか拳銃を取り出していたジムの行動と意味があるのだとするならば実は恐ろしい作品ではないだろうか。

 やはり物語のモティーフとなった「涙のサンダーロード」の歌詞がわかれば本作の理解もしやすいだろうから和訳しておきたいが、ストーリーと関係しているようには思えない。

「Thunder Road」 Bruce Springsteen 日本語訳

網戸がばたんと閉まると
メアリーのドレスが風で靡いた
ラジオから音楽が流れると
まるでこの世の物とは思えないように
彼女はベランダを横切りながら踊る

ロイ・オービソンが孤独な人たちのために歌っている
それは俺なんだ
俺が欲しいのは君だけなんだ
俺を再び家に向かわせないで欲しい
俺はまた独りで自分自身に対峙することができないんだ

おまえは心の内に駆け戻るのか?
俺がここにいる理由はおまえには分かっているはず
だからたぶん俺たちがもう若くないんだと考えて
おまえは怯えているんだ

少しは誠意を見せて欲しい
夜になれば不思議なことが起きる
おまえは美人というわけではないけれど
それでいい
俺にとってはそれで十分なんだ

おまえは自分の家に籠って
自分の痛みを思案し
おまえの恋人たちから試練を受け
雨の中にバラを投げ
これらのストリートから立ち上がろうとしている救世主のために
いたずらに祈りながら
おまえの夏を無駄に過ごしてしまうこともできるんだ

もちろん俺はヒーローではないし
それは言うまでもない
俺が捧げられる償いの全ては
この薄汚れた居住地域の下にある
どうにかしてこの状況を好転させるチャンスでもって
今俺たちができることが他に何があるだろうか?

車のウィンドウを降ろすことなく
風に任せておまえは髪をなびかせる
唐突に夜が終わると
それらの二車線はどこでも俺たちを連れていくだろう

俺たちにはこれらの翼を車輪に変え
それを現実にするための最後のチャンスがあった
後部座席に乗れよ
この道の先で天国は待っている

俺の手を取ってくれ
俺たちは今夜
約束の地を下見するために乗り切るんだ
サンダーロード
サンダーロード
サンダーロード

太陽の下の殺人者のように
そこに横たわっている
遅いことは分かっていたが
俺たちが走れば何とかなる
サンダーロード
しっかりと座って根付くんだ
サンダーロード

俺にはこのギターがあった
俺はそのギターを喋らせる方法を学んだ
俺の車は奥の方にある
おまえの表玄関から俺の前座席までの
長い道を歩む準備ができているのならば
車のドアは開いているが
乗るのはタダではない

おまえが孤独なことは分かっている
俺が言葉をかけなかったから
今夜俺たちは自由になるだろうし
全ての約束は反故にされるのだから

おまえが追い払った少年たち全員の瞳には
幽霊が映っていた
オーバーヒートしたシボレーの骨組みの中
幽霊たちがこの生気のない海岸通りに出没する

この通りで夜になると
幽霊たちはおまえの名前を叫ぶ
彼らの足元には
おまえの卒業式のガウンがボロボロになっている
夜明け前の人気の無い冷気の中で
おまえは彼らの轟くエンジン音を聞く

しかしおまえが玄関に出てみると
幽霊たちは風に乗って消えていた
だからメアリーは車に乗る
ここは負け犬で溢れた街
俺は勝利を得るために車に乗ってここを出て行くんだ

Thunder Road (Live at the Hammersmith Odeon, London '75)


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